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競馬Blog:夏休みの読書感想文に『輓馬』を

【時ハ馬ナリ!8月編】移りゆく競馬情勢を徒然なるままに追いかけ、タイムリーなトピックスを提供していきたいコラムです。(ph by 大吟醸)

執筆者:十時 龍一

日々移ろう競馬の話題をタイムリーにキャッチし、
競馬ライフに彩りと潤いを与えるブログ的コラム。

     ※諸事情で更新できない日は、それなりにご了承ください。


【時ハ馬ナリ】1月2月3月4月5月6月

夏休みの読書感想文に『輓馬』を



タイトル/挽馬(ばんば)

著  者/鳴海章(なるみしょう)

■プロフィール■
1958年北海道生まれ。
零細PR会社に勤務していた1991年「ナイト・ダンサー」で江戸川乱歩賞を受賞。航空サスペンス・エンタテイメント小説の熱心な書き手として知られるが、人間ドラマを主とした作品として「風花」「輓馬」など。いずれも映画化されている。

その他の著書
「真珠湾、遥かなり零戦隊血風録」
「ニューナンブ」など。




夏休みもあとわずかとなり、残った宿題の追込みにかかった人も多いはずだ。定番ものといえば絵日記とか読書感想文とかになるわけだが、ここは競馬ファンならではの読書感想文ということで『輓馬(ばんば)』をお薦めしたい。今年の春に映画『雪に願うこと』として上映されているので、そちらをご覧になられた方も多いだろう。



一度は成功したものの事業に失敗し借金取りに追われる主人公・矢崎学。夢破れて故郷である北海道の帯広へ帰ってくるところから物語は始まる。頼りにしたのは、ばんえい競馬で厩舎を営む兄だった。昔から折り合いの悪い兄だったが、無愛想ながらも厩舎スタッフとして矢崎を迎え入れてくれる。そこで出会う厩務員や賄い婦と暮らすうちに矢崎の心は少しづつ変わりはじめていく。そして、担当させられた馬ウンリュウの世話をしていきながら挫折した自分の人生をもう一度見つめ直し始めるのだった・・

といったようなストーリー。読みどころは馴染みのない“ばんえい競馬”の紹介になるだろうが、挫折から立ち上がる一人の男の物語としても面白いはずだ。血を分けた兄弟の葛藤や一緒に働く仲間との心のふれ合いを通じ、人生を取り戻そうとする主人公に共感を覚えたりする。また、最初のシーンで出てくる“ばんえい競馬”のレース描写やそこに集う人間模様や輓馬の特徴などもリアルにしっかりと描かれており、人間ドラマが好きな競馬ファンにピったりなのである。肩の凝るようなムズカしい小説じゃないし、エンタテイメントな作品として楽しめることだろう。ちなみに・・

【ばんえい競馬】約500kgの鉄ソリを1トンはある輓馬に曳かせ、途中に障害(坂)のある全長200mの直線コースで競うレース。スピードだけでなく馬のパワーと持久力、騎手のテクニックが勝負となる。北海道開拓に活躍した農耕馬を使い、農民がお祭り競馬として楽しんでいたものがシステム化され現在の形に発展した。すでに35年以上の歴史をもち、北海道が育てた世界でたったひとつの「ひき馬」競馬として内外の注目を集めている。


※参照『ばんえい競馬を応援する会



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