ヴィクトル・ユーゴーの長編小説をミュージカル化
人間愛に目覚めたジャン・バルジャン(写真中央)は、自分の子ではないコゼット(写真下)を命を賭けて、慈しみ、守り抜きます。写真提供/東宝演劇部 |
原作は、(名前だけは?)ご存知、ヴィクトル・ユーゴー。フランスの詩人・小説家で、この「レ・ミゼラブル(ああ無情)」のほかにもたくさんの作品を残しています。ショー的な要素が重要視されがちなミュージカルでは、物語性がない作品もあり(それはそれでとても楽しいんですよ!)、『レ・ミゼラブル』は、まずストーリーそのものがすばらしいのが強み。私も原作も読みましたし、ミュージカルも、国内外問わず、何度も観ましたが、毎回、心を揺さぶられ、「生きる」ということについて考えさせられます。
クロード=ミッシェル・シェーンベルクによる音楽も高い評価を得ています。派手なダンスシーンはなく、オペラのように歌だけで物語を綴っていきます。また、『レ・ミゼラブル』では、これまたオペラのように、同じフレーズが繰り返し、使われています。別に作曲家がさぼっているってことではないんですよー。一度使った旋律を、まったく別のシーンで、別の役者が、別の意味合いの歌詞で歌うんです。その繰り返しが物語の持つテーマ性を深めているんです。憎たらしいくらいの、絶妙な計算! 頭の中で、音楽がぐるぐるめぐっている状態で、帰路に着くのも毎度のことです。
そもそも『レ・ミゼラブル』ってどんな話?
妹の子に与えるため、一切れのパンを盗んだジャン・ヴァルジャンは、さらに脱獄の罪で、19年間もの時間を牢獄で過ごします。『レ・ミゼラブル』は、出獄後、司教の無償の愛に触れ、人間愛に目覚めたバルジャンの波乱に満ちた人生を中心に、さまざまな人々の懸命に生きる姿を描いた人間群像劇です。自由を求めて命をかけて闘う学生たち。自分の髪の毛を売り、娼婦に身を落として、子どもに送金するお金を作る母。信念に基づいて生きてきた男の、初めての揺らぎ──。「レ・ミゼラブル」(=虐げられた人々)が織り成すストーリーは、年齢、国籍を超えて、「生きること」「人間愛」を問います。
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