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花魁はなぜ心変わりを?『籠釣瓶』 その2(3ページ目)

惚れる男、恥をかかされる男、恥をかかせた女、殺される女・・・この一つの事件を描いた演目の現代性にも驚いた。また、歌舞伎の女形の役の中でも大役中の大役、吉原の傾城・八ツ橋に注目。

執筆者:五十川 晶子

この栄之丞を、吉原の座敷でちらりと見た次郎左衛門はピンときた。まさか、と思った。だが今日は同郷の仲間を連れてきている。もちろん、吉原でお大尽となっている自分を自慢したいのと、吉原トップの八ツ橋を見せ付けたいのもあるだろう。

最初に登場してきたときの次郎左衛門とは雲泥の差だ。あばたはさすがに変わっていないが、風格も堂々としたもの。どこか垢抜けてさえみえる。
なのに満座で恥をかかされたからたまらない。昔の仲間達の面前というのは、一番恥をかきたくないシチュエーションだったかもしれない。

台詞にもある。
振られるならそれもいい。だが初回でそういってくれれば諦める。なのに身請けだなんだとなってから、満座の中で突然の愛想尽かし。次郎左衛門に誰もが同情する。おそらく観客も。

また、こういうとき、同郷の仲間は意外に冷たい。おそらく「なんでアイツだけこんなイイ目にあいやがって」という嫉妬が、常日頃からあったのだろう。でなければこぞって「大方こんなことだろうと」なんて意地悪なことばかり言わないのじゃないだろうか。

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