それぞれの持ち味が溶け合って
そうしてこうして、約2時間半強の芝居は幕を閉じる。テンポよく、飽きさせない。例えばお家の事情や敵討ちの事情を語る場面は、えてしてだれて長引きがちだが、それもテンポ良く運んだ。
なにより、役者それぞれの持ち場・見せ場が面白く、染五郎愛之助の二人だけではない、仇討ちに巻き込まれた(殿様も含めて)青年達(プラス腰元)の群像劇となっているのがいい。
猿之助一門の、新しい作品を復活してきたこれまでの経験と、古典はもちろん、染五郎自身が体験してきた他ジャンルの芝居のカラーや間、女形と立役の両方で目覚しい活躍の愛之助、それを脇でぎゅーっと締める吉弥や薪車といった役者陣という顔合わせも、うまくこの作品にはまったように感じた。
心残り、というよりあくまで個人的な好みの問題だが、新作歌舞伎となると”大活躍”するのが新しく作られた曲たちだ。雅楽っぽかったり、筝曲っぽかったり、妙に近現代な単語の入っている詞章だったり。新邦楽とでもいうのでしょうか。
今回、講談型の語りが想像以上にこのドラマにはまっていたので、他のお囃子・鳴物以外の曲調が入ると別のカラーが加わって、なんとなく落ち着き悪く、場面によっては興ざめだった。
おしまいに。
考えてみたら衆道当たり前の江戸の歌舞伎は、BLだ、やおいだ……の世界と案外親和性のあるものだったりするのかも。東池袋方面で「腐女子」と名乗る女子たちのために、同作品が(別の結末で)ノベライズされていることも付け加えておきましょう。
これです。