フレグランス、火の玉、海に森・・・
この5人のメンバーの中では最年長。他の4人について、一言で表現するとすれば何だろうか?
「七之助君はねすぐ思いつくなあ。フレグランスです。どこにいても品があるというか、ちょっとしたしぐさもきれいでさわやか。柑橘系の香りです。
勘太郎君はパワーを感じますね。熱とか、魂とか、エネルギーとか、火の玉とか。走り回っている感じ。落ち着かないんですよ、ほんと(笑)
獅童君こそ火の玉かと思ったら、実は波も静かな海、潮騒。で、あるとき大きな波を立ててるんです。意外に静のイメージです。今は。
亀治郎君がね、一番難しいな。引き出しがたくさんある感じです。長老って言ったら怒るかな。ものをよく知っていて研究熱心。でしゃばらなくて、でも自己主張するときはする。ウインドウズ、っていうと非情な感じだけどそういう意味じゃなくて。森とウインドウズ、ってことにしておきましょう」
なんとも、なんとなーく納得のいくシンボルを言い当ててくれた。
男女蔵さんが今回なんども口にしたのは「情」という言葉。ジョウである。
「じっくりと心に残る芝居、情の通い合う芝居。その場だけ、1回だけ良いとかすごいとかじゃなくて。地道に稽古して、でも気が付くといつのまにか自分のものにできたようなそんな取り組み方をしていきたい」という口調に、男女蔵さんの生真面目なところがよく表れているようだ。
1998年の国立劇場『白浪五人男』では、市川新之助の弁天小僧に南郷力丸で奮闘。このときの南郷の眼の光の鋭さが印象に残っている。
今後は、『助六』の意休や、今月の『実盛物語』の瀬尾十郎など、父・左團次が担っている敵役の役柄にも次々と挑戦していくことになるのだろう。
「器用じゃない」と自ら何度も語っていたが、逆にこの熱心さを重ねていった結果、持ち前の目の力とあいまって、厚みのある敵役や立役を造形していってくれそうな予感がする。
いちかわ・おめぞう 滝野屋
四代目市川左團次の長男。昭和48年1月歌舞伎座『酒屋』のお通で初お目見え。翌49年2月歌舞伎座『燈台鬼』の少年時代の道麻呂ほかで六代目市川男寅(おとら)で初舞台。また第九期の国立劇場歌舞伎俳優研修生にまじって修行した経験も。平成15年5月歌舞伎座で六代目市川男女蔵襲名。
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