文章:五十川 晶子(All About「歌舞伎」旧ガイド)
チラシに込められた意味は?
まず人目をひくのは浅草歌舞伎のポスターとチラシ。表の黄金色の地の面は、オールカラーで、浅草寺雷門をバックに5人勢ぞろい。それぞれ役どころの衣裳に身を包んでいる。裏を返すとシルバーにモノクロのバック。5人とも今風の衣裳で、同じ順番で並ぶ。
男女蔵さんは向かって右。光沢のある銀の上下に蛇や花、「MOTHER」とかかれたハートを貫いた剣のようにも見える柄。
対する中村獅童さんは左。ホワイトのジャケットにシャツ。ピッタリしたパンツ(皮?)に白いバスケットシューズのような靴。
中央が中村七之助さん。やや紫がかった地でオレンジの大輪の花柄のだぼっとしたロングジャケットにおそろいの柄のパンツ。
その右が市川亀治郎さん。白いボアのハーフコートにカーキのパンツで裾が絞られている。靴は黒、編み上げタイプのブーツ。
七之助さんの左が中村勘太郎さん。同じくブラウンの紐靴にカーキのパンツ、濃紺のハーフコートは皮とナイロンが段違いに織られているように見える。
七之助さんの華やかさを中心に、亀治郎さんと勘太郎さんはハーフコート姿にハードな紐靴。左右に男女蔵さんと獅童さんの派手な姿。
これは絶対に何かあるに違いないと、男女蔵さんに尋ねてみた。
「僕と獅童君がカブキ者、亀治郎君と勘太郎君は旅支度。七之助君がお嬢というイメージだそうです。表を見たら、その役となんとなーく対応しているんですよ」。
なるほど。今年の 新春浅草歌舞伎は『三人吉三』と『毛抜』『義経千本桜~吉野山』で、男女蔵さんと獅童さんが、お坊と和尚、粂寺弾正と秦民部をダブルキャストで、七之助、亀治郎、勘太郎の三人もそれぞれお嬢吉三、小野春風、腰元巻絹、秦秀太郎、静御前に佐藤忠信実は源九郎狐を、昼夜異なる組み合わせで演じる。
男女蔵さんと獅童さんが演じる弾正の碁盤の目の柄の派手な衣裳が「カブキ者」に、「旅支度」は道行の忠信の衣裳に、それぞれ対応していたのだ。