従来の大劇場には感じられない、狭く暗い小屋ならではの魅力は健在だ。劇場は木の匂いのする素朴な造りに、天井にぶらさがる中村座と書かれた大きな提灯や、座紋の角切り銀杏の小さな提灯が左右に並ぶのも一興。
ただ空調の音がちょっとうるさくて台詞が聞こえないことも(にわか雨の日、雨が天井に当たる音でまったくせりふが聞こえなかったという声も)。
やはりこの独特の雰囲気を持つ小屋での公演を、初演以来成功させ続けている勘九郎他の役者たちのエネルギーには脱帽だ。
「小屋の雰囲気を楽しんで、芝居を面白がってやっている」光線(どんなや)がとにかく強烈なのだ。客からすれば、そのこと自体が観劇の最高のスパイスでもある。
筆者自身、それを体感したくて、ここにやってきているような気もするのだ
小屋のすぐ裏には九代目団十郎の『暫』の銅像も。記念撮影して帰る客も多い。
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