残念だった点もなくはない。
一人二役、三役が多く、これが実は分かりにくかった。侍と殿様の二役や、中老と側室の二役など、扮装が似ていたり二役の必然性があまりないパターンが重なったせいかもしれない。「え?今の、さっきの人と違うの?」という思いを何度かしてしまった。
そしてもう1点。
渋谷はコクーン歌舞伎での、すみずみまで丹念に施された串田演出を、実は今回あまり感じることができなかった。『鏡山旧錦絵』別名「女忠臣蔵」と言われる局達を中心に据えたお家騒動ものの後日譚を、現代演劇の演出家によって解きほぐされ再構築された舞台を期待していたが、その点についてはちょっぴり物足りないままだった。
舞台裏ぶち抜きも楽しいが、たとえば渋谷の雑踏が突如劇場に溶け込んで効果を上げたコクーンに比べ、やや効果が弱かったのではないだろうか。本水にクレーン、骨・・・と、ケレンたっぷりなのは毎度毎度ウレシイのだが、演劇的な必然性(それってなんだよ、というのもありますが)がもっとあればよりズッシリと感動できたかな、とは思う。