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『象の背中』でもう一度学ぶ「生きること」(2ページ目)

『象の背中』は、秋元康さんの新聞連載小説の映画化作品。生きること死ぬことをまっすぐな視線で見つめた作品です。死を前にしていなくても、一瞬の価値について学べると思いませんか?

執筆者:オライカート 昌子

一期一会で思い出す一瞬の価値

象の背中の画像
妻は、浮世離れした美しさを感じさせます
(C)2007「象の背中」製作委員会
「人は誰でも死んでしまう、だから自分の生きた証をこの世に刻みつけたい」というのは、昔から多くの人の願いです。ピラミッドのように大きな建造物で自分の存在を証明しなくても、この映画では違う方法もあることを教えてくれます。

それを描きたいために、『象の背中』は大きな出来事もなく、ドラマチックな葛藤もないのかもしれません。この映画では人との出会いが大きな比重を占めています。まるで、大きな建造物を遺す代わりに、自分の生きた証を人の中に思い出として刻み込むように思えるのです。死を前にすれば、今会っている人にもう一度会える確証はありません。どんな出会いも「一期一会」。それに尽きるのです。

人との出会いばかりでなく、見るものや手に取るもの、食べるものすべてひとつひとつとの出会いが貴重に思えるはずです。病であれば、いま美味しく食べているものが、次の機会には味気なくなってしまう可能性もありますし、今日楽しく散歩できても、次の散歩は苦しみが伴うものである可能性もあります。

ですが、一瞬一瞬を味わいつくし、例えもないほど美しく感じることができるとしたら、それはとても価値があることです。わたしたちが、浪費しているかもしれない一瞬の価値を、嫌でも感じざる得ない立場となってしまったらどうでしょうか? 現在を心ゆくまで感じつくす喜びは、たとえ死に直面していなくても、体験できるはずではないでしょうか?


次のページは番外編ですが『像の背中』と通ずる作品をいくつか紹介します。
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