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『象の背中』でもう一度学ぶ「生きること」

『象の背中』は、秋元康さんの新聞連載小説の映画化作品。生きること死ぬことをまっすぐな視線で見つめた作品です。死を前にしていなくても、一瞬の価値について学べると思いませんか?

執筆者:オライカート 昌子

現在公開中の『象の背中』は、作詞家やプロデューサーとして活躍している秋元康さんの新聞連載小説の映画化作品。生きること死ぬことをまっすぐな視線で見つめた作品です。死を前にしていなくても、一瞬の価値について学べる作品です。

『象の背中』は男の理想を描く

象の背中の画像
理想の生き方を感じさせます
(C)2007「象の背中」製作委員会
主演は日本を代表する俳優・役所広司。映画のほぼ最初で、末期がんの宣告を受けます。死に直面するなんて、誰も普段の生活では思いも寄らないこと。主人公の藤山幸弘も同じです。でも彼は、怒鳴ることも声を上げて泣くことも、誰かにすがりつくこともしません。当初は家族にも言いません。武士が黙って運命を受け入れるように、静かにそれを受け止めるのです。

苦しみを受け入れ、延命治療は拒否。そして、その日が来るまでは「生きたい」と、自分なりにその方法を見つけていきます。彼の周りの人もみんな理想的ないい人。ドラマチックなことも起こらず、死へと向かう日々は、静かに進んでいきます。

秋元氏は、男の理想的な生と死を描いているような気がします。本当に死が半年後に迫っているとしたら、人は主人公の藤山幸弘のように、諦観と達観を持つことができるのでしょうか? 本当にそうなのかどうかはともかくとして。人とのつながりを確認することが、一番大切なことになるになるのでしょうか? 『象の背中』は、リアルをファンタジーに包みながら、死と生についての理想を描いた作品と言えます。

死を前に、見えてくるものとは?

象の背中の画像
主人公は、ガンの宣告を受けてもジタバタしません
(C)2007「象の背中」製作委員会
藤山幸弘は、理想的な過程を経て死へと向かいますが、登場人物の中には、そうでない人もいます。同じく死へ向かっていっても、象のように群れから離れて一人で死に直面する覚悟をしているのです。2人に共通しているのは、生きている間にやり残したことを見つめ直し、自分の生きてきた証を確認したいという思い。落し物があったかどうか、もう一度確かめに戻るように。

そして、死を視野に入れて初めて「生」の意味も見えてくるのが分かります。何が大切なのかがはっきりしてくるのです。中世の人が、メメント・モリ(死を忘れるな)と警句を持ち続けたように、死と対比することで、より「生」の実感を得ることができるのです。


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