フランキー・ワイルドの素晴らしき世界
『フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』は、12月23日より渋谷シネ・アミューズにて公開。さらに全国順次公開。 |
イビサ島は、ヨーロッパの若者たちを熱狂させるクラブの聖地。この作品には、イビサの享楽的・刺激的な雰囲気が、贅沢に描かれています。実際に、現役の人気DJの数々が顔を出しているのもチェック。
主演は、『マッチ・ポイント』にも出演しているポール・ケイ。実在感たっぷりに、カリスマDJの栄光と転落を演じています。
この映画は、「もし、あなたを最悪の事態が見舞ったら?」という命題を突きつけます。DJにとって、最悪の事態は聴覚を失うこと。人気DJのフランキー・ワイルドは、そのとき、どういう運命を選んだのでしょうか?
トロント国際映画賞、シティ・アワード賞を初め、数々の賞に輝いたこの作品には、息を呑むシーンと、観客を煙に巻く、大きな仕掛けが! 仕掛けに引っ掛かるとしたら、それは監督の手腕かもしれません。
刺激的な映画を監督したマイケル・ドース監督は、カナダ出身。長編映画は2作目ですが、この映画の成功を受け、すでに2作の新作を監督することが決まっているそうです。
マイケル・ドース監督に、映画のこと、仕掛けのこと、カナダの映画製作現場の状況、イビサ島について等、じっくりお聞きすることができました。
監督インタビュー
フランキー・ワイルドの素晴らしき世界について
マイケル・ドース監督にお話をお聞きしました。 |
初めにタイトルとイビサ島での撮影ということだけが決まった段階で、プロデューサーから、監督へお話がいったとのことですが、このようなストーリーになったきっかけは、どういうものでしたか?
マイケル・ドース監督:
このストーリーのおおまかな部分は、初めから頭にあった。DJを主人公にすること、コメディの要素、ドラッグが絡むことなど。以前の作品『Fubar』の脚本をペラペラめくっている時に、アイデアが閃いたんだ。『Fubar』では、登場人物が癌に侵されてしまう。それで、主人公に最悪のことが起こったら、どうなるだろう?って想像してみた。
DJにとって、聴覚を失うことは、致命的だ。すべてのアイデアが音から始まるのだから。そのようなことが起きたら、もっとユニークな脚本になるのではないかと考えた。
ガイド:この作品では、冒頭は、インタビューの場面で始まります。特に、最初のせりふが、インタビューに答えた女性の言葉「ありがとう、ありがとう、ありがとう」で始まるところが、印象的ですが?
マイケル・ドース監督:映画の冒頭の5分間の場面はとても大切なんだ。様々な人に、フランキー・ワイルドの思い出を語らせることで、彼の個性が一度に浮き上がることを狙った。また、イビサの海辺の風景と、インターナショナルな雰囲気が描けるんではないかと思った。
この冒頭の場面で、見ている人は、フランキー・ワイルドに興味を抱くはずだし、彼がどうなるのか、気になると思う。
ガイド:この作品では、音楽と沈黙の対比が描かれていますね。
マイケル・ドース監督:その通りだ。フランキー・ワイルドの住む世界を観客に感じて欲しかった。その世界では、音楽に心を奪られ、音楽と共にあることが、靴を履いてると同じように、自然な世界なんだ。
フランキー・ワイルドの素晴らしき世界は刺激的な映画。 |
そしてしばらくすると、静けさという、さらに深い音が、姿を現す。音とは何か、ということが突きつけられると思う。マンホールの暗い中に落ちていくような感覚、カタストロフィーだ。音の姿が明確になるんだ。
ガイド:それは、日本でいう、禅の世界に似てませんか? 美しい世界でもありますね。
マイケル・ドース監督:静けさは、似ているかもしれないが、この映画に関しては、美しくもなく、平和でもないんだ。
静けさというのが、映画の世界ではほとんど描かれていないと思う。音は、映画のコンセプトに欠かせないない。バンバン拳銃を撃つ効果音のように。だから静けさにさらされたら、一種のシンプルな効果があると思う。
ガイド:フランキー・ワイルドは、”愛すべきはみだし者””破天荒でも憎めない奴”というバランス感覚をもたせたかったということですが、その、フランキー・ワイルド的な部分は、監督の中にありますか?
マイケル・ドース監督:少しならね。あそこまで、極端ではないけどね。誰もが、心にフランキーを少し抱いてるんじゃないかな。心に抱いてるだけで、表面に出さないけど。
ガイド:フランキー・ワイルドの素晴らしき世界は、コメディでもあり、悲劇でもあり、シリアスな部分もあり、そのバランスが絶妙ですね。
マイケル・ドース監督:最も暗い状況の中に、あるコメディ要素があり、その反対もあるけれど、その対比は、ドラマチックだと思う。
ガイド:観客の方にどのように見て欲しい映画ですか?
マイケル・ドース監督:この映画は、コメディチックでもあり、ラブストーリーでもあり、大変な状況も起きる。
生き残り、愛を見つけ出す男の映画。もしかしたら、皆さんが期待しているものとは、違う方向に物語りは進むかもしれない。作り手の私たちにとっては、それしかいえない。
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