強くてかっこいい男は理想的ないい男か?
Mr.インクレディブルは、ヒーローの中でも突出した存在かもしれません |
『ラスト・サムライ』のオールグレンだって、わが道に向かって歩いていってしまいます。『007シリーズ』のジェームズ・ボンドなどは、女性の扱いに関しては、かなり身勝手です。『インディ・ジョーンズ』だってそう。現実に恋人か、妻か、友達として付き合うとしたら、楽ではないかもしれません。
ある面では素晴らしい人々ですが、他の面では欠けてるところもきっとあるのです。そのあたりは人間的です。彼らも、本物のいい男になるために、今後研鑽していかなくてはならないのかもしれませんね。
研鑽を成し遂げたヒーローといえば、『Mr.インクレディブル』を挙げてもいいでしょうか? 憧れられる存在から虐げられる側に回り、家族を持ち、普通の会社員として日々を過ごさなくてはならない元スーパーヒーロー。人生の様々な面を経験したことで、渋みを加え、パートナーや家族と協力する柔軟性も持っています。いい男候補の強い男の代表として、一番先頭に置きたいのですが、少し、ダイエットかエクササイズは必要かもしれませんね。
悪に惹かれるわたしたちの心理
恋人同士秘密がある関係。この恋の行方はどうなるんでしょう? |
「未満の男」呼ばわりは失礼かもしれませんが、『ミステック・リバー』のショーン・ペンが演じたジミーにも、アル・パチーノが演じた『シモーヌ』のタランスキー監督にも、中には共感する人がいるかもしれませんが、自らのエゴのなすがままです。周囲の人も、彼らの影響下にあれば、傷つくことが多いかもしれません。
「未満の男たち」は、一見、魅力的だったりするのです。甘えがちな人、何かを隠しているような人、自分勝手な人、相手を強く必要としている人に、なぜ、わたしたちは惹かれてしまうんでしょう。長く一緒にいればいるほど居心地がいい、「本物のいい男」は、それほど誰かを必要とはしていないのです。誰かを激しく傷つけることもないはずです。
「未満の男」たちに惹かれる理由としては、自分の中の似た部分が刺激されるせいかもしれません。誰だってエゴがあるし、自分勝手な部分、甘えたい部分、思い通りにしたい部分がありますよね。『彼の嘘と彼女のヒミツ』という映画は、自分の弱さに気づかなければ、自分に一番ふさわしい人には、出会えないって思わされるストーリーです。
ビル・マーレイ主演作の『恋はデ・ジャブ』は、ニュースキャスターのフィルが、「同じ一日」の中に閉じ込められ、何度も同じ体験をしてしまうという話です。初めは、「未満の男」さながらやりたい放題。体験を生かして好きな女性にもアタックします。やがて、自分が変わらなければ、事態は結局繰り返しに過ぎないと気づき、彼の変化が始まります。この映画では、「未満の男」が次第に脱皮し、一人前のいい男に成長していく道筋が描かれているような気がします。
今はまだ、「未満の男」だとしても、自分の中のエゴを認め、コントロールできるようになれば、大きな変化です。いつかは、強さと優しさを併せ持つ、誰よりもいい男になれないとは限りません。
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