‘許す’という言葉が持つ重さ
刑務官役のカン・シニルなど脇を固める実力派にも注目だ |
前作の『力道山』もそうですが、監督は、いつも出生によるつらい運命を背負っている人に惹かれているように感じますが、それはなぜでしょうか。
ソン・ヘソン監督:
力道山も、『ラブレター』のイ・ガンジェも、『私たちの幸せな時間』のユンスも、皆似ていますよね。というのは、人間ってみな同じだと思うのです。とてもお金持ちの人もいますし、幸せな人もいますが、ほとんどの人は平凡な小市民です。私もそんな一人です。映画の主人公たちは劇的な人生を歩んでいるように見えるかもしれませんが、普通の人たちと同じ悩みを抱えているのです。
ガイド:
この映画は韓国で大ヒットしましたが、監督にはどんなものを残しましたか。
ソン・ヘソン監督:
私にとって色々な意味がある作品です。(『力道山』で失敗して落ち込んでいた)私を救ってくれた映画、そしてカン・ドンウォンとイ・ナヨンという童話の主人公のようなイメージがあった二人を演技という側面から見るようにさせた作品でもあります。うれしかったのは、韓国で上映したあとに、あるおばあさんからメールを貰いました。「‘許す’という言葉の意味を教えてくれてありがとう、と。見た人の心に‘許す’という言葉を残すことができたのだなと思うと、監督としてとても幸せでした。
映画『私たちの幸せな時間』ストーリー
生きる意志も希望もない男女が刑務所の‘出会いの部屋’で向き合っている。世界から隔離された刑務所内の死刑囚ユンス(カン・ドンウォン)と、世界という鉄条網に閉じ込められて生きている自殺常習犯のユジョン(イ・ナヨン)。貧しく不幸な境遇にいた男と、裕福で華やかな女。あまりにも違いすぎる二人は、ひねくれた言葉や冷たい言葉をかけあう。しかし、二人はやがてお互いが似ていることに気づく。自殺未遂によってできたユジョンの手首の傷。手錠が作り出したユンスの手首の傷。少しずつ警戒心を取り除き、お互いの心を覗き始め、二人は今まで心の中にしまってきた‘真実の物語’を語り始める――。■映画『私たちの幸せな時間』公式ホームページ