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M-1グランプリ2005 その熱戦を振り返る(2ページ目)

去る2005年12月25日に開催された「M-1グランプリ2005」日本中を巻き込んだその魅力とハイレベルな激戦を勝ち抜いた上位3組の特徴を分析してみます。

執筆者:金田 有朋


「麒麟」…優等生がみせたアグレッシブな本能

あの「キリン」とは違い、まさに勇ましい「麒麟」といった感じです。
「キリンです」
今回のM-1でもっとも目を見張ったのが「麒麟」ですね。彼らには、ガンガン前に出てくる「THE若手芸人」というよりは比較的おとなしい優等生のイメージがありました。

しかし今回ばかりは勝利に対する闘志が半端なく、極めて攻撃的でした。事実、第一回のM-1グランプリにまったくの無名のまま登場した際、松本人志から「僕は一番好きですね。」という賛辞をもらった自信もあるのでしょう、若さや知名度は度外視して「漫才という分野では絶対に負けない!」という強い意志が伝わってきました。異様な緊張感で幕を開けたうえに8番目というネタ順。観る側の集中力も若干下がり気味になる中、どんな空気にも呑まれまいとするパワーも溢れていましたね。上位3組による優勝決定戦でもプレッシャーのかかる一番手を買って出るあたりはまさにアグレッシブ。結果としてネタ中にお互いを「バカっ!」とか「ウマ面っ!」と罵りあったり、いつも以上にテンションが高かったりする部分が観客とわずかな温度差を生み、紙一重の空回りに陥った感もありますが「麒麟」の漫才に対する情熱は観ていて非常に心地良いものでした。甲子園を目指す高校球児の純粋さ、とでも言いましょうか。

今回は残念ながら3位に終わりましたが、この経験はまだ若い彼らにとってとてつもなく大きな経験になったと思います。少なくとも私にとってはそんな「麒麟」が今後を期待させる意味でも大きな収穫でした。近い将来、彼らはM-1を獲るのではないでしょうか。と思って調べてみたら、彼らのコンビ結成は平成9年。M-1のルール上、コンビ結成10年目となる今年がなんとラストチャンス!なるほど、それじゃ気合が入るのも当然かもしれません。

「ブラックマヨネーズ」…ネガティブな要素を巧みに操る技術

申し訳ないことに「ブラックマヨネーズ」はノーマークでした。一年ほど前に彼らのネタを観た時、オーソドックスで上手いなぁとは思ったもののこれといって印象に残らなかったからです。しかし一本目のネタを観て普通にビックリですよ。もともとの上手さにも磨きがかかり、かつキッチリとキャラクターが立っていました。「ハゲとブツブツ」という「肉体的ネガティブ」要素をコンビのイメージとして売りつつ、ネタ自体では観客を引かせない「精神的ネガティブ」をもってくる。ここに至るまで大変な苦労と努力があったんだろうなぁと思わずにはいられません。とても魅力的なスタイルを見つけたものです。
例えば、優勝決定戦のネタでみせた「街でカラまれた時用の予防策」として、

小杉 : 空手なんかいいんじゃないですか。
吉田 : でもなぁ…、街でパンチ出すとき「せいやっ!」言ってかわされたらカッコ悪いからなぁ…!
小杉 : 二発目で倒したらチャラなくらいカッコえぇやないか!
吉田 : 二発目の「せいやっ!」は一発目と同じテンションで言われへんわ!
小杉 : だったら言わんかったえぇやないか!
吉田 : 言わんかったら「この人一発目の『せいやっ!』のこと気にしてるんかなぁ、と思われるやないか!」

こんなネガティブな「考え方」とツッコミのやりとりが、口ゲンカのようにエキサイトし、漫才を盛り上げていきます。もしこれが「どうせオレはブツブツだから…。」といった予想通りのネガティブ一辺倒だったら単なる自虐ネタで終わりますし、何よりも観ている側が入り込めません。負のイメージを作り上げて、負のイメージで裏切る。これはまさに「ネガティブの魔術師」と言えるでしょう。
今回M-1を制したことにより、2006年は仕事量も格段に増えると思います。となると彼らにとっても勝負の年になりますが、期待を込めて見守っていきたい気分です。

いやぁ、あらためてこの3組だけみてもM-1は素晴らしいイベントですね。出場芸人がMAXに力を振り絞ったネタだけでなく人間模様まで観ることができます。芸人からしたって大きな目標になりますし、お笑い界全体のレベルを底上げする要因にもなりますよ。こりゃ今から今年の年末が楽しみでしかたありません。いやむしろ待ち遠しすぎるので今年は私もエントリーします!元旦ではないですが、一年の計は年始付近にあり!ですよ。この場を借りて高らかに参加表明したいと思います。

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