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『ダウンタウンのごっつええ感じ』の魅力を振り返る(2ページ目)

1990年代、お笑い界を席巻した伝説の番組「ダウンタウンのごっつええ感じ」。いまあらためてこの番組の何が凄かったかを特選DVD集から紐解きます。

執筆者:金田 有朋

迎合ではなく、笑いに対する挑戦と格闘

ドリフはお茶の間のみんなが笑えるお笑いを提供していた。
前述のとおり、かつて「お笑い」や「コント」といえば「ドリフ」や「ひょうきん族」。日曜の夜に食卓を囲んで「志村うしろ~っ!」と叫んでいた時代を多くの人が生きていました。いわば、家族そろって楽しめる番組。ゴールデンタイムとはまさにそういう「分かりやすい笑い」の時間帯でした。
そんな時代が尾を引く中、こんなコントをしていったい誰が分かるんだ?っつう話ですよ。これは。
しかも芸人は、売れたいし、おもしろいと思われたい人たちです。難解なコントはリスクが伴います。

にもかかわらず、ダウンタウンをはじめ『ごっつええ感じ』ではそれをやってのけた。笑いに対する「挑戦」としか考えられません。しかも驚いたことに、これらのコントは、いま見る方が刺激的でタイムリーです。逆に言うとようやく時代が追いつき始めたという感じです。
8年経って、やっと新しさが分かるコントを昔からやっていたと考えると、この番組のパワーには計り知れないものがあります。

要は時代に迎合して「分かりやすい笑い」を作るという発想はそこにはなく、あくまで自分たちが作り出す「笑い」に対しての攻撃的な戦いが『ごっつええ感じ』では繰り広げられていました。
ですので、このDVDには笑いに対する自信とプライド、強烈なまでに考え抜かれたコントの数々が詰まっています。
とはいえ一方で、そういう思想は前面に露出していません。作り手の思想が出すぎてしまうと、受け手の「笑う」という行為の妨げになるからです。作品としての完成度は物凄く高いのに、アーティスティックな色合いには落とし込んでいません。
単館系の映画なんかで、作家色が強すぎて入り込めない作品ってありますよね?『ごっつええ感じ』に関してはそういう無駄が一切ありません。

いやぁ。気が付けばやけに文化論的な切り口になってしまいました。
まぁそれだけ奥が深く、「お笑い文化」に与えた影響度の高い番組なのですが、観ている側としてはこの際何も考えず、存分に笑いましょう。
果てしない「笑い」との格闘の果てに、我々が安心して笑える環境をダウンタウンが作ってくれているのですから。

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