Q1~Q4はパート1の記事をご覧ください。
Q1●今回減らされるという、企業年金とは何ですか?
Q2●会社がつぶれるようなとき、年金をもらえなくても当然では?
Q3●OBが反対するとなぜ年金額を減らせないのですか?
Q4●OBはなぜこれほど、かたくなに反対するのですか?
Q5●企業年金を減らす方法にどんなやり方があるのですか?
企業年金の給付を減らすことは会社が勝手に行っていいわけではありません。これはQ4などで説明したところです。ここではその具体的テクニックを紹介してみます。給付を下げる具体的なテクニックとしては、「給付利率(予定利率)の引き下げ」「受け取り年数の長期化」「終身年金の廃止」などがあります。
まず、給付利率の引き下げです。仮に退職金が1000万円であり、年金払いをするケースを考えてみます。このとき、これを10年払いすると100万円×10年かというとそうではありません。給付期間の10年間も支払い残額を運用して増やすことができるので年金受取額は増えるのです。仮に年4.5%の利回りが想定されれば、年金額はなんと126.4万円×10年で合計1264万円になります。ところが、これを年1.5%の利回りにすれば、108.4万円×10年で合計1084万円に下がるというわけです。元の退職金は変わらずとも、利息の違いだけで、受け取り合計が約15%も減るのです。
受け取り年数を延ばすという方法もよく使われます(実際には、死亡した際に残額を精算受け取りできる年数である保証期間を見直す)。
もし1000万円の退職金を10年給付、4.5%利回りであったとすれば、上記で試算したとおり、126.4万円×10年で合計1264万円を受け取ります。これを15年給付、年3.0%利回りにすると、年額は83.6万円ですが、15年の受取合計は1256.5万円になり、年額は下がりますが、受取総額はほとんど変わらないともいえるわけです。
この年金受取の権利が終身であったとすると減額の可能性が出てきます。60歳男性の平均余命は約23年ですから、もっと長くもらえる可能性が高いからです。この試算でいえば、前者で23年受け取ると合計2907万円のところ、後者は1926.6万円ということになり、長生きした場合にはずいぶん年金額が下がることになるわけです。
いずれも「一時金の権利1000万円」は変わっていないのがポイントです。企業年金の受け取りは終身受け取りの権利や保証期間、利回りの条件などが大きく影響するしくみなのです。
ただし、こうした減額した年金に納得できない場合、減らされる前のルールで一時金精算をできる権利を与えなければなりません(確定給付企業年金法の定めによる)。これは、一方的な減額が反対した人にも押しつけられないようにするための配慮です。権利の行使を強制的に認めないとすれば問題があると思われます。