宝塚の楽屋! 上級生のお手伝い
宝塚の楽屋でお手伝いをする下級生
そんな時の心強い助っ人が……お手伝いをしてくれる下級生の生徒。
“上級生のお手伝い”とは、いっしょに舞台に出ている同じ組の下級生が楽屋や舞台袖で手伝うという、いわば付き人のような役目です。
では、その下級生による“上級生のお手伝い”とは、一体どんなことをするのでしょうか?
早替わりのお手伝い
“上級生のお手伝い”の一番大きな仕事が、早替わりのお手伝い。
衣装を着せるのは衣装部さんの仕事ですが、生徒一人一人に衣装部さんが付くわけではありません。
自力で、または隣りの生徒と着せ合いっこして早替わりをしますが、出番や早替わりの多い生徒、またその衣装によっては、“自力”“着せ合いっこ”では無理な場合が多々あります。
なので、お手伝いをする生徒が衣装部さんのような役目をします。
トップスターから数名までのスターさんには、専属の衣装部さんが付きます。「じゃ、お手伝いは必要ないんじゃない?」と思われるでしょうが、その衣装部さんだけでも不可能。それは早替わりの頻度も衣装の数も多いから。
また大きく重たい衣装……例えば、フィナーレに着る羽根の付いた衣装……これを衣装部さんだけで着せるのは困難。
衣装部さんといっしょに、早替わりのお手伝いをします。
早替わりという短い時間にすることは、衣装の脱ぎ着だけではありません。髪型を直す、化粧を直す、装飾品を変えるetc。それらを手伝ってあげるのもお手伝いをする生徒。
手鏡やスプレー、クシ、はけふきを手渡したり。アクセサリーや髪飾りを付けてあげたり、ブーツのファスナーを上げてあげたり。飲み物を渡したり、ウチワであおいであげたり。次の場面に必要な小道具を手渡したり。
その上級生の動きを見ながら、欲しいもの、必要なものをサッと準備してあげます。
お手伝いをする生徒は、その上級生を「出遅れさせない」「忘れ物をさせない」「安心してキレイに舞台に立たせる」といった、下級生でありながらどこか母のような気持ちかもしれません。
○○を移動させる
早替わりをする場所が一箇所なら問題はないのですが、大きく分けて上手・下手に分かれています。そこで問題なのが、衣装や小道具etcの移動。
例えば――以下、お手伝いをしてもらっている上級生の生徒をAさん、してあげる下級生の生徒をBさんとします。
Aさんは衣装部さんとBさんのお手伝いのもと、上手の早替わり室で早替わりをし、舞台に出て行きました。
衣装部さんは、脱いだ衣装の片付けや次の早替わりの準備をしています。
そこには、今Aさんが脱いだ靴とおかもちが残っています。
舞台上のAさんは、次は下手に引っ込み、下手の早替わり室で着替えます。
次の場面で、先ほど上手の早替わり室で脱いだ靴を履かなければなりません。
そしてどんな時にも、おかもちは必要。
もう、おわかりですよね?
Bさんは、靴とおかもちを持って、上手の早替わり室からホリゾントを通り下手の早替わり室へと走ります。
こうして、必要な○○を移動させる場合も、お手伝いをする生徒が大活躍します。
必要なものの準備やチェック
準備やチェックが一番大変な衣装。これは衣装部さんが主にやるのでそれを補佐します。
ただ衣装部さんも、トップクラス以外は一人の生徒に付きっきりではないので、お手伝いをする生徒も準備やチェックを。サッと着替えられるよう、着る順番に上から並べたり、靴を置いたり。
他には、小道具を準備したり、開演前にはおかもちの中身のチェック。
早替わりの時はそれに集中し、その上級生が舞台上にいる間も、お手伝いをしている下級生は次の準備に余念がありません。
お手伝いをする生徒は、その上級生の動きや、いつどこで何が必要なのかを、できることなら初日の幕が開くまでに把握していなければなりません。
“この場面はどこから出てどこに引っ込むか?”“次の場面まで何分または何十秒なのか?”“必要な小道具は?”etc…。
これらは、稽古場で稽古をしている段階で把握できます。
“ここで髪型を変える”“こんなアクセサリーを付ける”など、生徒自身が考える事柄も、事前に聞いておくことができます。
ただ衣装や靴となると、詳細は舞台稽古までわからない場合があります(自分が着る衣装を舞台稽古で初めて知る場合も多々あるくらいですから)。
だから舞台稽古は大変です。
自分自身も舞台に立つわけですから、覚えなければならないこと、やらなければならないことがたくさんあるのに、プラスお手伝いをする上級生のことまで考えて覚えなくてはなりません。
以上は舞台袖でのお手伝いの大まかな内容ですが、では楽屋では?
本番中とは違い開演前、小休憩、大休憩などは時間に余裕がありますから、トップスターでも自分でできることは自分でします。
ただ“背中を塗ってあげる”など、お手伝いが必要な場合もあります。
またオプション(?)として、舞台稽古の前に化粧前に化粧品を並べてあげたり、千秋楽にはその片付けをしてあげたり、公演中には化粧前の掃除をしてあげたり。
カツラの手入れをしてあげたり、 脱いだ私服をハンガーに掛けてあげたり、終演後に楽屋を出る時、楽屋口まで荷物を運んであげたり。
これらはお手伝いをする個々の生徒の好意ですね。
と……下級生による上級生のお手伝いをお話しましたが、思う方もいらっしゃるでしょう。「自分自身も舞台に出ているのに、下級生って大変……」と。
確かに大変ですが、お手伝いは決して強制ではありません。
また“下級生と言われる間は、必ず誰かのお手伝いをしなければならない”とか“ある程度の学年(上級生)になればお手伝いをする下級生が付く”というわけでもありません。
これは、生徒同士、みんなで助け合って……という伝統のようなもの。
ですから、上級生が下級生の早替わりのお手伝いをすることだってあります。
自分が舞台に立つことがまず先決。できる範囲でお手伝いをすればよいのです。
さて――誰が誰のお手伝いをするのかはどうやって決まるの?etcは、また後日に。
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