礼儀作法
「まるで軍隊のよう…」。長年、宝塚音楽学校で教えられる礼儀作法や言葉使い、規律の厳しさはそんな風に言われています。事実、厳しいです。
その礼儀作法や規律のほとんどは、学校の先生が教えるのではなく、本科生が予科生に指導し、それが代々受け継がれているものもあれば、時代と共に変化してゆくものもあります。
「ベルサイユのばら」初演頃から厳しさがどんどん増したと言われ、たぶん私が在校していた時代はそのピークだったかもしれません。昨今それが幾分緩やかになり、本科生、予科生とも以前より授業に専念できるようになったのではないでしょうか。
どんな規則があり、どんな風に厳しいのか……? それは詳しくお話できません。なぜなら、その年によって違うためと、「指導の内容を、たとえ親にも話してはいけない」と教えられてきたからです。
ただ、卒業生らが笑い話(時が過ぎればみんな笑い話になる!)として話してもいますし、宝塚ファンの方々が目にした光景から感じることも多々あるでしょうね。
道や廊下を歩く時、どちら側をどのようにして歩くのか。
挨拶は何と言うのか、または目礼だけなのかなど時間帯によってそれぞれ違う。
制服や髪型などに少しも乱れがあってはならない。etc…
そうした規則を少しでも間違えると本科生に注意されます。
有名なのは、お掃除。予科生は一年間、毎朝1時間半ほどかけて、各教室、講堂からトイレに至るまでを、各教室の各分担に分かれ掃除します。
鏡やピアノには指紋一つなく、裸足や白足袋で踊る床はいつもピカピカ。綿棒やガムテープ、絵筆までを掃除道具として使い、ホコリ一つありません。
これも、個々の教室の各分担の本科生から指導され、掃除の出来はチェックされたものです。
「舞台に立つために宝塚音楽学校に入ったのに、なぜ、このような作法や規則が必要なの…?」。そう思われる方も多いでしょうね。正直私も思いました。「舞台に立つための基礎を学ぶと言うより、叱られるために入学したような気がする…」なんてね。
でもそれらはすべて、歌劇団に入団してから役立つものばかり。