銀橋というところは、お客さんに一番近い場所。だから、本舞台では見逃されるかもしれないミスも、気づかれてしまう怖さを感じているのです。
ちょっとした振りでも、化粧の崩れも、髪型の乱れも。だから、止まらない足の震えに気づかれることが、怖くて仕方ありませんでした。
私の名誉のために申しておきますが……私がドンクサクてケガをしたのではありません! いつもは置いていない照明の機材が、その日に限ってなぜかホリゾントの隅に置いてあったのです。
おまけに、ホリゾントは真っ暗だから、大道具さんか誰かが必ず懐中電灯で照らしてくれているのに、その日に限ってなぜか誰もそれをやってくれてはいなかったのです。つまり、スタッフのミス。その証拠に、舞台管理の方が丁重に謝りに来られ、労災もおりましたから。
でもそのケガ、膝の靭帯が伸びきってしまっていました。歩くだけでも激痛。階段を上る時も激痛。下りる時は悲鳴を上げそうな激痛。膝がくっ付いていないのではないかと思うぐらい、ブラブラしてました。
不幸中の幸いだったのは、それが千秋楽の三日前だったこと。痛み止めの注射を膝に打ち、騙し騙しで何とか千秋楽を迎えました。後遺症は、退団後にまで残ったけれど。
話は大きくずれ、私のコント……いえ、涙なくしては語れないかわいそ~うな物語と展開しましたが……銀橋には、そんな怖さもあるのです。お客様に近いがゆえの緊張が。
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