【66号 2002年6月14日発行】
銀橋・番外編
改めて言わなくてもご存知でしょーが、私は銀橋の上で、難解なステップを踏むとか、大きなドレスを着てすれ違うなんて経験をしたことはございません。
だいたい「すいませーん! ちょっとここ、通りまーす!」てな感じですから。
文化祭で初めて通った時や、初舞台のラインダンスの時は怖かったですが、他はとりたてて別に。
でも一度だけ、とんでもなく怖い経験をしました。『宝塚をどり賛歌』という日本物のショーでの出来事。
フィナーレ近くに「さくら幻想」という場面がありました。結構長い場面。
それも終盤に差し掛かった頃、私はチコ(梢真奈美)さんとサッチン(詩乃優花)と三人で、本舞台上手から下手に踊りながら移動し、下手の袖に引っ込んだとたん、超ダッシュで舞台裏のホリゾントを走り、上手の花道から銀橋に出てポーズをしなくてはなりませんでした。
で、三人で下手の袖に引っ込み、ダッシュで走り出したとたん、どべーーっ!と転んじゃったのです。
舞台上ではないので悪しからず。その無様な光景は、お客様には見えていません。
その“無様な光景”は今でも鮮やかに覚えています。
カエルのように前にうつ伏せになっている。
カツラがずって前がよく見えない。
持っていた扇子はどこかにふっ飛んだ。
ホリゾントだから暗い。
扇子を手でひたすら探す……。
まるで……コントです。
「大丈夫?!」と振り向いてくれたチコさんとサッチンですが、自分も急がなくてはならないから、私を助け起こすヒマはない。い、行かないで~!
なんとか扇子を手にし、ずれたカツラを直しながら、ギリギリセーフで花道に到着。
もちろん花道では「星子が来ないー!」とみんな慌てていました。
なんとか間に合い、ボロボロの状態で銀橋に出て座ってポーズ。
そしたら……左の膝がガクガク~!と震え出したのです。自分でもビックリするほどに。そして突然、急激な痛みが。
やっとわかったんですね。転んだ時に、相当強く膝をぶつけたことを。
それが本当に怖かったんです。何が怖かったのかと言うと「すごいケガをしたのではないか?」とか「ポーズが終わった後、立てるだろうか?」ではなく!「この震えが、お客さんに気づかれるのではないか?」ということでした。