代役にもいろ~んなパターンが……
新人公演ですでにその役をやったという場合、落ち着きもだいぶ違う。やるべきことは覚えているから。でも上級生と絡むとなると、また違う緊張がある。同じ役でも全然別の感触。
下級生によくあるのが、踊ったことのない雰囲気のダンス、演じたことのない色の役などをいきなり代役でやる怖さ。稽古もしないで舞台に上がるのだから、ガンガン緊張する。間違えなければそれでいい……ってもんじゃないものね。
いつもとは全然違う役をするのも大変だけど、何気に似ていることをするのもこれまた大変。
“同じ振りだけど、ところどころ違う”“左右全く逆の振りを踊る”“同じ歌だけど、違うパートを歌う”etc…。
リセットして1から……なんてそう簡単にはできないよ。頭と体をはすでに覚えきっているわけだから。
私も下級生の頃、よく誰かの代役をした。歌やセリフでは声が震え、小道具を差し出す手は震え。慣れない衣装をあわてて着たせいで背中のスナップがはずれ、舞台上で下着を見せてしまったなんて恐ろしく恥ずかしい思いもした。
「伊丹十三さんに頼んで“宝塚の代役”という映画を作ってもらいたい!」とその度に思ったもんだ(今ならさしずめ三谷幸喜さんか)。代役の舞台裏は――テンポ抜群、スリル万点、涙あり笑いあり、人情味あふれるドラマになるぞ!