子どもが笑う
好調なのは『斉藤さん』『エジソンの母』『だいすき!!』といった子育て・教育もの。視聴率2位は『斉藤さん』。事前情報から「斉藤さん」(観月ありさ)が正論をいって視聴者がスッキリするようなドラマをイメージしていたのですが実際は違いました。対立している三上りつ子(高島礼子)は意見は違っているけど間違っているわけではなく、また3話までの直接的な悪役、高校生たちもも悪さはしているけど斉藤さんは「社会の大人の責任よね」と心配しています。普通だったら黒幕になりそうな親の市会議員夫妻は姿さえ見せません。また斉藤さん自身も正論をいいながらも影では悩んでいます。
コミック原作でありながら現実の社会に近い問題をまじめにとりくんで、かつ人の目を気にする真野若葉(ミムラ)などいろいろな立場の登場人物がいてそれぞれに感情移入できるのがヒット要因でしょう。
そして初回からの視聴率の上がり方が最高の『エジソンの母』がガイドイチオシ。
「少年時代のエジソンのような子どもが転校してきて教室を混乱に陥れる」というあらすじはおもしろいけど、単発ならともかく連ドラとして三ヶ月持つのか?と事前には思っていました。しかし毎回、賢人(清水優哉)が一つの疑問を納得するのと初回だったら「とりあえず前に進む」などの教訓をからませて、連ドラとして成立しています。
賢人が「翼がダメなら体にガスを入れれば飛べるか?」などいろんなことを疑問に思って実験するのが毎回大爆笑。思うにこれは「おならは燃えるか?」などつまらない疑問を解決する『探偵!ナイトスクープ』と同じ精神ですね。原案の元フジテレビプロデューサの山口雅俊は神戸出身だから関西ノリが共通しています。賢人も東京じゃなく大阪の小学校に転校すれば「おもろいやつ」と最初から大人気なんじゃないでしょうか。
そういえば山口雅俊は灘高と東大で村上ファンドの村上世彰元代表と同級生、コロンビア大学に留学しMBAを取得した後、フジテレビに入って『カバチタレ!』『ロング・ラブレター~漂流教室』『ランチの女王』『不機嫌なジーン』など変わったドラマをつくった人だけに、賢人は自分のことなのかもしれません。
「きれいなだけでおもしろくない女」と大人だけでなく子どもにまでいわれる鮎川規子のキャラも伊東美咲の使い方としてはうまい。
『だいすき!!』は知的障害者の子育てという微妙な問題に真っ正面からとりくんでいて好感(原作の力も大きいのでしょうが)。第1話を見てキャストが弱いところが気になりましたが、2話で家族の一員として福田沙紀、また保育園の園長役の音無美紀子に保父役の田中幸太朗などが加わり22時台の連ドラらしくなりました。
教育ものということでもう一つ加えるとNHK土曜ドラマ『フルスイング』。全6話と短いのでこのグラフ分析の対象外ですけど、今どき「熱い教師」を説得力を持って成立させていてビックリです。実話がベースであるというのがまたすごい。
「きみらの夢を応援しとる人間がな、この世に最低1人はおるっちゅうことをぜひおぼえておいてほしい」「結局は子どもたちが自分で答えを見つけるしかありません」「大きな耳、小さな口、優しい目で待つんですわ」など名セリフも連発しています。