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6月のおすすめスカパー!&DVDドラマ 人はドラマのために死ぬにあらず(2ページ目)

よくあるドラマは、ストーリーの都合で登場人物を死なせてしまいます。避けようとしながらあえて「死」を扱ったこのドラマ、底に重いものがあります。

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

ドラマガイド

てめえらみんなありきたりだ!

日常を否定する実の父・沢田とマジメに働く育ての父・庄一という二つの生き方を、二人の間を揺れる和彦で対比させるという構成です。

沢田竜彦を演ずる山崎努が魅力的で和彦ならずともひかれます。印象的なセリフがたくさんありますが、その一つを紹介します。

治療を勧める和彦に対して
「からだが丈夫だって長生きしたって、なんにもならねえ奴はいくらでもいる。なにかを、誰かを深く愛することもなく、なんに対しても心からの関心を抱くことができず、ただメシをくらい予定をこなし習慣ばかりで一日を埋め、くだらねえ自分を軽蔑することもできず、俺が生きててなにが悪いと開き直り、魂は一ワットの光もねえ。そんな奴が長生きしたってなんになる?そんな奴が病気なおしたってなんになる?」

そして、いつものトドメは「ありきたりなことをいうな、お前らは骨の髄までありきたりだ!」

それに対峙する育ての父・庄一を演じるのは昨年なくなった河原崎長一郎。まじめに働く普通のお父さんを演じては日本一!ではまっています。

そして二人の男にはさまれるもう一人、都を演じるのが岩下志麻。かつては沢田とくらし今は望月の妻として平凡に暮らす主婦という二つの要素をさすが「極妻」、見事に両立しています。

連続ドラマは、途中の盛り上がりを重視するため、その反動で最終回でみんなを納得させるようなドラマはそんなにありません。ところが『早春スケッチブック』は最終回放送前には「どうやって結末をつけるんだろう?」とまったく予想できませんでしたが、終わってみると「これしかない!」という完璧な終わり方でした。

死を目前にした沢田の危険な魅力により和彦ばかりか娘の良子、さらには妻の都まで竜彦の方にひかれていくという状況に追い込まれた庄一はある決断を下します。その決断がすごいのですが、それはドラマを見てのお楽しみということで…

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人はドラマのために死ぬにあらず

巨匠・山田太一、5月に放送された市原悦子主演の『やがてくる日のために』でも健在ぶりをみせてくれました。
その『やがてくる日のために』と『早春スケッチブック』には共通点があります。山田作品としてはめずらしく「死」を中心にあつかっていることです。

『岸辺のアルバム』『想い出づくり。』『ふぞろいの林檎たち』などなにげない日常を描きながらそれをドラマにしてしまうのが特徴の山田太一脚本ですが、ドラマ中で登場人物が死ぬことはほとんどありません。「死」は人生の極限であり、そこを描くとなにげない日常の方がぼやけてしまうからです。

それだけにめずらしく「死」を扱ったこの二作、ストーリーの都合で登場人物を死なせてしまうよくあるドラマに比べて、底に重いものがあります。

それでも『やがてくる日のために』は死期が近いメインの患者三人のうちドラマ中に死なせたのは一人だけ…
やはり「死」を描くのは避けてるようです。

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