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江戸時代の歴史は「大奥でつくられる」2 大奥:お玉はダースベイダーに!(2ページ目)

『大奥 第一章』のその後は?大奥ものの元ネタは乙女小説!お玉は今後ダース・ベイダー化する…ほんとかよ?

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

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女性メイン大奥パターンの元祖は

『大奥 第一章』は春日局(松下由樹)を主人公に、前半はお江与(高島礼子)、後半はお万(瀬戸朝香)とのライバル関係を中心に描かれています。春日局、お江与は昔から有名ですが、お万はあまり語られることにないキャラでした。
そのお万を歴史ものの表舞台に引っ張り出したのは吉屋信子の小説『徳川の夫人たち』です。

吉屋信子は大正から昭和にかけて活躍した作家で、明治29年生まれ、14才で雑誌「少女界」の懸賞小説一等でデビュー、大正5年、19才の時に「少女画報」連載の『花物語』が大ヒットした少女小説の第一人者です。
大正9年には大阪朝日新聞連載の『海の極みまで』が好評で女性作家としての地位を固めます。今でいうならコバルト文庫出身で直木賞をとった唯川恵、山本文緒が何十年かたって巨匠になったような人でしょうか。

その吉屋信子が昭和41年、1966年から朝日新聞に連載したのが『徳川の夫人たち』で少女小説でつちかった上品さで大奥を描き大好評を得たのでした。

さて、その『徳川の夫人たち』のお万は高貴で美しく、またこれ以上側室になる女性が生まれないように努力するなど『大奥 第一章』のお万もその影響を強くうけていますが、全体の描き方も『大奥 第一章』全体、いや大奥もの全般に大きな影響を与えています。
それは「ほとんど女性だけの世界である」ということです。

大奥なんだから当たり前じゃないか、と思われるでしょうが『徳川の夫人たち』以前の大奥ものは違いました。女たちの戦いの背後に老中、若年寄、側用人などが関係しているんです。
考えてみるとそちらの方が現実的です。家光・忠長のお世継ぎ争いでも、家光には守り役(教育係)として酒井忠世、土井利勝、青山忠利の三人がついていて、自分たちのためにも家光に将軍になってもらわねば困るから活動していたはずです。


再び花開くか吉屋少女小説

それではなぜ『徳川の夫人たち』はほとんど女性だけなのか?それは吉屋信子の少女小説がそういう世界だったからです。

代表作『花物語』はミッションスクールの寄宿舎で7人の少女が花にちなんだ悲恋を語っていくなど、吉屋少女小説は女学校を主な舞台として女性同士の強いつながりを描き、男に媚びずに女性の自立を描くのが基本精神でした。
そのため大奥を描いても将軍以外の幕府関係者の存在は薄くなっています。またお万は女性の自立のために他の側室のことを考えてあげるお姉様キャラになっています。

このあたりの少女小説の精神を今に体現しているのはタカラヅカ。宝塚少女歌劇ができたのは1913年、大正2年のことでした。

ちなみに吉屋信子の代表作の一つ、『あの道この道』は1月1日にDVDが発売される大映テレビ『乳姉妹』(85年)と1月からのフジテレビ系13時30分の東海テレビ昼ドラ『冬の輪舞』両方の原作にして『牡丹と薔薇』にも影響を与えたとのことで、『冬の輪舞』がブレイクすれば復刊されそう。

また映画『下妻物語』原作者で「乙女小説」の嶽本野ばらが編者となり『屋根裏の二処女 吉屋信子乙女小説コレクション』も出版されるなど、吉屋信子再ブレイクの日は近い!?

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