これは愉快、大笑い『たぬきのおつきみ』
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ここで購入!たぬき山のタヌキたちが豊年満作に感謝して、人間と同じようにお月見をしようと奮闘します。 | たぬき山のたぬきたちは里を見下ろし、秋の収穫に喜んでいます。今年も豊年満作で人もたぬきも愉快愉快。人間だけでなくオレたちも、ということで、たぬきたちは米やお芋をこっそり失敬し、すすきを刈って、たぬき山の広場でお月見の準備を始めます。
「よろこんで くださるかのう」「わろうて くださるかのう」たぬきたちは おつきさんに てをあわせた。
「ほんのすこしずつ」「みんなはとらん」と、お地蔵様のお供えのお団子を1つだけ残したり、なんともこっけいな「よかべべ」を着たり、たぬきなりのお月見の支度がユーモラスです。お化粧なんてグロテスクもいいところなのですが、心はピュアなところがみそですね。たぬきたちの志が通じ、お月様は「わろうてくださる」わけなのですが、やさしい微笑ではなく、大笑い。かくいうガイドも大笑いです。意図せずしたたぬきたちのお月見の様子はどうぞ絵本で見てみてください。お月様が笑えば、人間もうれしい。人間の実りを失敬したたぬきたちですが、お月様の笑いは回りまわって人間たちへの贈り物になりました。
■ 『たぬきのおつきみ』
作:内田麟太郎
絵:山本孝
出版社:岩崎書店
価格:¥1,260
発行:2003.9
物悲しい十五夜『ぽんぽん山の月』
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ここで購入!母ウサギが猟師に撃たれたことを知らない4匹の子ウサギ。月のウサギをおかあちゃんだと思い込みます。 | 木々の生い茂るぽんぽん山には、動物たちややまんばがひっそりと暮らしています。十五夜の晩、子ウサギが4匹おなかをすかせて悲しんでいました。ふと見上げた月に見えるうさぎ。子うさぎたちは、それがおかあちゃんだと思って呼びかけます。
「おかあちゃん、おりといでよ。」「ぼくたち、おなかが すいたんだよう」
実は、子ウサギたちの母親ウサギは猟師に鉄砲で撃たれてしまったのでした。知らないうちにみなしごになっていた子ウサギたちを哀れんで、そっと団子を届けたのは誰だったでしょう?
悲しくも深い、あまんきみこさんの世界です。小さな子ウサギたちから、やまんばへ、風の子へ、そしてお月様へ。ぽんぽん山をだんだん俯瞰していく視点の変化も見事です。子ウサギたちは、おかあちゃんが月でお団子を作っていると思い込みますが、やまんばがうれしく手にしていたのもちょうどふもとで意を決して買ったばかりのお団子でした。それにしてもいつまでも残るのは、母親ウサギの無念です。ウサギは本当に月にのぼって子ウサギたちを見守りつづけるかもしれませんね。
■ 『ぽんぽん山の月』
文:あまんきみこ
絵:渡辺洋二
出版社:文研出版
価格:¥1,260
発行:1985.12
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