絵本/絵本関連情報

みんな大好き、ぐりとぐら!(前)(2ページ目)

子どもや大人の好きな絵本で、常に上位にランクインされる『ぐりとぐら』。現在刊行されているシリーズ7冊を、四季を追いながらじっくりご紹介します。野ねずみのぐりとぐらはどんな毎日を過ごしているのでしょう。

執筆者:鈴木 宏枝

春:どったんばったん『ぐりとぐらのおおそうじ』

春のはじめ、ぐりとぐらは冬じゅう閉め切っていた家の中がとても汚れていることに気づきます。穴のあいた服や靴下を着こんで、ぐりは「ぞうきん」に、ぐらは「ほうき・はたき」に。愉快な春の大掃除です。

横着! 横着です! でも、なんて楽しそうな大掃除でしょう。掃除用具が使い物にならなかったゆえの苦肉の策ですが、こんな掃除なら遊び感覚でやりたい子どもがたくさんいそうですね。ぐりとぐらのやんちゃでいたずらなところが垣間見られ、ほっとできる1冊です。

お楽しみはやっぱりおやつ。ぐりとぐらを「ぞうきんおばけ」と「ほうき・はたきおばけ」だと勘違いしたうさぎの子が、友達を連れてそっとのぞきに来るのです。正体見たり、ぐりとぐら。ぴかぴかになって春を迎えた家で、ぐりとぐらは、格別おいしいにんじんクッキーでお茶にするのでした。

■『ぐりとぐらのおおそうじ』
文:中川李枝子
絵:山脇百合子
出版社:福音館書店
価格:\840
発行:1977/2002.2

春:うららかな風に乗って『ぐりとぐらとくるりくら』

4月1日の朝、ぐりとぐらはお弁当を手に原っぱへ。ところが、何かに帽子をさらわれてしまいます。木の上から手を伸ばしたのは、手長うさぎのくるりくらでした。3匹は意気投合して一緒に遊びはじめます。

「春爛漫!野にも里にも春の絵本」でもご紹介しましたが、春風を存分に感じることのできる楽しい絵本です。「ちょっと てながうさぎになりたかったから」おまじない体操をして、ひょろろーんと伸びる長い手の持ち主になったうさぎというのは、なんとも楽しいイメージですね。ぐりとぐらとくるりくらで高い木の上にのぼり、雲のボートに乗って空をめぐる中、目覚める春の息吹が胸いっぱいに感じられます。

■『ぐりとぐらとくるりくら』
文:中川李枝子
絵:山脇百合子
出版社:福音館書店
価格:\840
発行:1987.4

春:遠足に行ったら何して遊ぶ?『ぐりとぐらのえんそく』

春まだ浅いある日、ぐりとぐらはお弁当をリュックサックにつめて、遠足に出かけます。

いくら リュックが おもくてもくたばらないぞ ぐりとぐら

体操をしてもまだまだお弁当の時間にはまだ遠い。マラソンを始めてみると、いばらの茂みにひっかかった毛糸を見つけます。たどっていくと、大きなくまさんの家に着きました。

中川李枝子さんはこうおっしゃっています。

私ね、子どもが朝いつまでも寝てるっていうのは許せない(笑)。子どもはお日様と一緒。夜は早く寝て、朝は起きるっていうのが子どもの生活だと思うんですね。午前中めいっぱい遊んで、お昼を食べた後は昼寝して(略)(『ぼくらのなまえはぐりとぐら』p.21)

まさに、ぐりとぐらは午前中に動き回る幼児そのものです。特に『ぐりとぐらのえんそく』では、それが「めざましどけい」や「10じ」という具体的な数字やアイテムで示されており、「元気だな、ぐりとぐら。子どもっていいな、こういう生活こそ健やかだな」と思わずほほえんでしまいます。くまさんも大満足のお弁当もうれしい時間です。

■『ぐりとぐらのえんそく』
文:中川李枝子
絵:山脇百合子
出版社:福音館書店
価格:\1,260
発行:1979.4

夏:うみぼうずは泳ぎ名人『ぐりとぐらのかいすいよく』

ぐりとぐらが磯の浜辺で遊んでいると、びんが流れてきます。

しんせつなともだちへしんじゅとうだいへきてください。

真珠灯台を目指していくと、海坊主が出迎えてくれました。

大きな海坊主の一大事に、小さなぐりとぐらが小ささゆえに助けてあげられます。ほとんど人間の青年のような海坊主は、気のいい海の番人という感じで、お礼も気が利いています。くらげおよぎにくじらおよぎなど、海坊主の見せる様々な泳ぎは圧巻。達人の指導のおかげで、行きはのんびり浮き袋だったぐりとぐらも帰りには、飛ぶように早い「うみぼうず・およぎ」をマスターできました。

浜辺の松の木がいかにも日本の海水浴らしいです。この夏、海水浴の予定のある方はぜひ読んでみてくださいね。海坊主からのびんの手紙は見つかるでしょうか。

■『ぐりとぐらのかいすいよく』
文:中川李枝子
絵:山脇百合子
出版社:福音館書店
価格:\840
発行:1976.8

>>次のページは ぐりとぐらの秋と冬 『ぐりとぐらとすみれちゃん』『ぐりとぐらのおきゃくさま』
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『ぐりとぐらのかいすいよく』ここで購入!海水浴に出かけたぐりとぐらは、びんにつめた手紙を見つけます。真珠灯台で海坊主が困ってSOSを出していたのです。
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