「宿題やったの?」は子どものやる気をなくす・効果が低い
大人(親や教師など)が子どもに関わる際、様々な形で「声かけ」をします。激励の「頑張れ」、心配の「大丈夫?」などです。多くの声かけには意味があり、効果があります。しかし、あまり意味がない(効果が低い)声かけもあると私は感じています。「お知らせ」や「確認」などの役割の声かけです。「宿題やったの?」もこれに当てはまります。家庭において、朝の慌ただしい時間帯に親は子どもに対して多くの声かけをします。「早く起きて!」「早く着替えて!」「早く食べて!」「歯は磨いた?」「忘れ物はない?」などです。親は「お知らせ」や「確認」などの意味合いで声かけをしていますが、多くの子どもは聞き流しています。
親は声を掛けたことで自分がすべきことをした(役目を果たした)という意味での満足感のようなものを感じてしまいます。しかし、実際には子どもに親の思いは伝わっていないことが多いです。
「宿題をやったの?」などといった言葉を言うことで、親は何となく自分の役目を果たしたような気になってしまいます。しかし親の思いとは裏腹に子どもは、あまりきちんとその言葉を受け取ってはいないことが多いようです。
「宿題やったの?」の問題点3つ
「宿題やったの?」といったような「お知らせ」や「確認」に関する親の声かけが、子どもの育ちにあまり良い影響を与えないことには理由があります。まずは「依存度が増す」ことです。色々なことを親がしてくれるので、子どもとしては自分から動かなくても済む状況になってしまいます。「自立」の反対の状態です。
また「やる気が削がれる」という面もあります。「宿題やったの?」と親が声かけをした際、子どもが「今、やろうと思っていたのに……」と言い返してくることがあります。その場に合わせたような言い訳のようにも聞こえますが、実際にやろうと思っていたタイミングで親が声をかけてしまったのかもしれません。まさに「出鼻をくじかれる」という感じになることもあります。
最後は「信頼感の無さを感じてしまう」ことです。「宿題やったの?」という親の言葉の裏側には「きっとやっていないのだろう……」というニュアンスが多分に含まれています。子どもからすると「信頼されていない」という気持ちになってしまいます。
「宿題やったの?」を言わない対処法……チェックリストを考える
「チェックリスト」は小学校の日直の仕事などでよく使われるやり方です。学校で用いられている仕組みは家庭でも応用できるものがたくさんあります。学校では、集団が快適に過ごすことができるようにと長い年月の中で考えられてきたものがたくさんあります。クラスの日直の仕事は毎日すべき内容が決まっています。例えば、「黒板の日付の書き換え」「学級日誌の記入」「下校時の窓の鍵のチェック」などです。そういったものを短冊状の紙に書き、目立つところに吊り下げておきます。その日の日直は、紙に書かれている仕事が済んだら、紙を裏返します。表と裏で色を変えておくことなどで、やっていない仕事が目で見て分かるようになっています。 家庭でも同様のことができます。まず、家に帰った後にすべきことのリストアップをします。「手紙を出す」「洗うものを出す」などと共に「宿題をやる」というものも出てきます。この時には親主導で決めていくのではなく、子ども主導で決めていくことが望ましいです。親主導で決めてしまうと子どもにとっては「やらされている」という印象になってしまいます。
子どもが「なぜこのようなことをするのか?」と聞いてきたら、「自立をして欲しいから」と答えると良いでしょう。いつかは親から離れて暮らしていかなければならない、残念だけれども順番でいけば親の方が先に亡くなってしまう、そういったことを考えると「子どもの自立」はとても大事であり、「言われてやる」のではなく「自分で行動する」ということが望ましいからと子どもに伝えます。
チェックリストは画用紙でもできますが、市販されている薄いシート状のマグネットがおすすめです。表と裏で色の違うものだとさらに良いです。それを短冊状に切り、表と裏に「宿題をする」などのチェック項目を書き込みます。
マグネットは、様々なものに貼り付けることが容易です。学校の場合は、黒板や教室のドアなどを利用します。家庭では、冷蔵庫などに付けることできるのですが、冷蔵庫ですと、子どもの目には入りにくいです。磁石が付く、小さなホワイトボードなどを用意して、子どもの視界に入りやすい所に置くとよいでしょう。
「育ち」や「学び」においては、その人の心理状態が大きく影響を与えます。家庭での日々の暮らしの中で子どもが「やらされている」、「信頼されていない」などの思いを抱くことが少なくなるよう親は関わっていきたいです。
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