子育て事情/子育て事情関連情報

団塊ジュニアが語る、郊外型子育ての実感(2ページ目)

郊外育ちの団塊ジュニア、ガイド河崎。なぜまた子育ての場所として郊外を選んでいるのか? 郊外生活の光と影の実感を、現代思想・社会学系の言説に触れながら語ります。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド

郊外っ子、郊外へ住まいを求める

たまプラーザ駅前
「あなたが主役(ヒロイン)」――『金妻』のDNAを持つ街
さて、幼い子どもを育てながら初めての住宅取得に乗り出したとき、私が思い描いたのは、ただひたすら「勝手知ったる沿線」、そして「郊外」。結果として選んだのは、私が小学生の頃に一世を風靡したドラマ『金曜日の妻たちへ』のDNAを持つ街だった。

街の中心に電鉄系デパートがあり、塾、英会話教室やスイミングスクールなど、子どもたちの習い事も充実している。かつて「第4山の手」と呼ばれたらしいその街並みは、緩やかな起伏を持つ丘に家々がゆったりと並び、祖父母の家を思い起こさせた。グルメ誌などで紹介されるようなレストランやパン屋、ケーキ屋にもこと欠かない。俳優や女優、スポーツ選手も好んで家(この場合は邸宅)を構えるらしく、レストランやデパートの中でちらっと姿を見かけることもある。そんな「ワクワクの装置」が充実した街は、若い世代が快適に子育てをできる環境だと思った。

「あの国」っぽいライフスタイルを○○が丘で

南仏風の町並み
「○○風」と銘打たれる家並みが続く
郊外生活に批判的な視線があるのも、百も承知だ。よく似た背景、条件の子育て家庭が一斉入居するコミュニティーでは、お互いによく似ているゆえに、家庭同士の小さな差異が大きな意味合いを持つことがある。専業主婦率も高く、完璧で効率の良い家事に励み、子どもの習い事や学校、塾の送迎が一日の大きな仕事。自分も習い事をこなしながら、身奇麗にすることも怠らない。

住宅は、どれも可愛らしい色調、イメージを纏っている。南仏やアメリカ東部、地中海など、「憧れのあの国」を意識した家々が建ち並び、クリスマスシーズンには住民が飾りつけたイルミネーションで通り全体が華やかに輝く。

そこは、社会学系の論者が言う「演技のハコ」であり、住民がお互いの視線を感じながら「素敵なストーリー」を紡ぐ舞台である。「あなたが主役(ヒロイン)になる街」なんていうコピーが分譲マンションの広告に躍るのは、放送以来25年経っても健在な『金妻』DNAのせいなのかもしれない。


>>>郊外の街は「幻想」のテーマパーク?/ニュータウンの絶望感>>>
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