小児科医からは疑問の声が……
米国の小児科医療では、12ヶ月に満たない赤ちゃんのほとんどが排泄のコントロールができないという考えが主流。小児科医からは、「体の仕組みができていない乳児の時代からあえてそういう訓練をする必要がどこにあるのか……」と半ばあきれたようなコメントがされています。また、子育て中の親も、ほとんどがそのやり方に疑問を持っているようです。
「すごいとは思うけど、私はやらない」「時間とエネルギーがたくさんある人には向いているかも」「訓練が完成しない間は、漏らすわけでしょう? 外出中はどうするの?」「あちこちでおしっことうんちをするなんて、子どもは犬じゃないわ!」「紙オムツがイヤなら、どうして布オムツにしないの?」「シーって言われないとおしっこできない子どもに育っちゃったらどうするの?」など、「オムツを使わない子育て」が一般に認知されるのには、かなり道のりが険しそう。
トイレトレーニングは文化の伝承だ、という見方
ガイドがとても興味を持ったのは、「オムツを使わない子育て」を実践する親の動機のひとつに、「アフリカやアジア文化圏の影響」が挙げられていることでした。例えば中国の地方部では、生後6ヶ月で赤ちゃんの布オムツをはずす習慣が残っていることで有名です。その後のトイレトレーニングでは股の部分が割れたパンツを履かせ、おまるの上にそのまま座らせます。この中国式のオムツはずしがNHKで放送されたときは、大反響を呼んだとのことです(山岡テイが行く世界のマナー、日本のしつけ from So Da Tsu comより)。
インドの市井でも、排泄は海辺や川の中で集団で大々的に行われています。日本でも、公共の場での排泄が恥ずかしいことだと認識されたのはここ最近のこと。未だに街なかには立小便の跡を見つけることもあり、公共の場での排泄や、赤ちゃんのオムツはずしに対する意識は、その土地の文化によってまちまちであることがわかります。「オムツを使わない子育て」派の親が、排泄のきっかけとして口で「シー」という音を発するという点も、日本の習慣を髣髴(ほうふつ)とさせていますね。
日本の育児では、幼稚園入園の際の目安に「オムツがとれていること」を挙げる園が多かったために、就園前(多くは2~3歳台)までにトイレトレーニングをするのが長年の主流だったよう。また、その頃には子どもも多かれ少なかれ言語を獲得して、トイレに行きたいと自己表現ができるようになったり、排泄の間隔も空いたりと、トイレで排泄をする準備が整ったと考えられてきました。
ガイドは子どものトイレトレーニングに関して忘れられないコメントがあります。ある小児科の医師の言葉ですが、「トイレトレーニングは義務ではなく、文化の伝承である」。現代の日本で言うならば、トイレトレーニングとは「排泄はトイレでするものだ」という親の排泄観を子どもに伝えるということなのだ、という主旨でした。
医学が発達し、下水も整備されて衛生観念が浸透した先進国では、排泄はドアの内側でなされ、子どもの排泄物もオムツと一緒に処理されるのが「普通」と考えられていますが、別の土地では文化が異なれば常識も異なるということ。トイレトレーニングに悩むお母さんたちには、ちょっと肩の力を抜いて考えるきっかけとなるかもしれません。しかし、世界最大の紙オムツ消費国である米国でDiaper-freeを貫くのは並大抵のことではなさそうですね!
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