親のえり好みは、発達のしるし
この息子君は「パパが嫌い」というよりは、「ママがとっても好き」なのです。このように子どもが養育者のえり好みをすることは、よくあること。大人でさえもフィーリングや趣味の合う・合わないで人に好感を抱いたり、苦手意識を持ったりするのと同じように、まだ人間関係を修行中の幼児はその選り好みがオブラートに包まれず、はっきりしているのです。このえり好みの原因は、いろいろあります。その人と過ごす時間の長さや性格的な相性、共通の興味や話題があるかなど。過ごす時間の長さというのは、長くても短くても子どもに選り好みされる場合があります。普段慣れているためにコミュニケーションの方法が予測しやすいということで、長く接している人のほうに安心感を覚える子どももいれば、普段滅多に会えない人にこそ、好奇心からべったりという子どももいます。
前ページに紹介した事例では3歳の幼児ですが、もちろんこれより小さい子どもにも、えり好みはよくあります。まだ言葉もしゃべれない乳児が、ママではなくパパやおばあちゃんが抱っこすると激しく泣いてしまったり、ママ以外の人から与えられるミルクをあまり飲まなかったりするのは、いわゆる「主たる養育者(=この場合はママ)」との愛着(アタッチメント)の形成が無事に完了しているしるし、発達のしるしでもあります。
しかし、これらの原因とは別に、家族の中の出来事(特に夫婦関係など)の影響が顕在化している場合もあるかもしれません。例えば子どもの前で派手な夫婦喧嘩をしてしまい、どちらかが一方的に厳しく激しい言動を子どもに見せてしまったなどです。子どもが「怖い」と強い印象を持ってしまったりすると、その影響が少し長引くこともあります。しかし、どんなえり好みも、好まれないほうの立場の人にとっては悲しいものですし、両親の間で子どもへの愛情が偏るということは避けたいものです。
パパからの一貫した愛情が、その後を決める
「僕のこと見ないで」とまで言われてしまっては、どんなパパでも深く傷つきますよね。ですが、そのようなきつい物言いは子ども特有のもの。ここでママが、「この子は私だけを好きなんだわ……」と得意になってしまったりするのは禁物です。パパの傷ついた気持ちを理解し、子どもにとってのパパとママの立場を平等にするように努めなければいけません。ママの面前で、お子さんがパパを拒絶するようなことを言えば、「いまはパパではなくて、ママがいいのかしら? でも、パパはあなたのことを大好きなのよ。パパはあなたのことをいつも気にしてくれているのよ。ママは、あなたがパパとも仲良くしてくれるほうが嬉しいわ」など、パパからの愛情を印象付けるメッセージを発することが必要です。
また、パパの方も決して「君がパパを嫌いって言うなら、パパも君が嫌いだ」という態度に出てはいけません。確かに言葉はきついけれども、相手は子どもなのですから。諦めずに、一貫して「君はパパを嫌いって言うけれど、パパは君を大好きだよ。いつもそばにいるよ。それがパパというものだよ」と変わらない愛情を示していくことで、いずれ子どもの極端な偏りは直るでしょう。これは感情的になかなか難しいことかもしれませんが、この一貫した「無償の愛」こそが、子どもに自分は無条件に愛されているんだという根本的な自尊心を与えるのです。
「いまだけさ!」と自分に言い聞かせつつ……
産前のママのケアもした、ベビーのオムツを替え、お風呂に入れ、一緒にお出かけもし、ミルクだってあげた。それなのに、「パパ嫌い」だなんてやり切れない……。確かにその通りですが、一方でママも同じ目に遭うこともあるのです。事実、我が家の息子(2歳)は大のパパ派で、パパがいる日は何をするにも「パパと一緒がいい」人。「ママ、ダメッ!」と激しく拒絶されたりすると、私もつい「そーかよ」と、スネて後ろ向きな気持ちになるのは否めません。でも「明日があるさ、いまの時期だけさ!」と自分に言い聞かせて、今日も子どもを育てるのです……、ふっ。あぁ、つい愚痴を。では、また次回にお会いいたしましょう。ごきげんよう!
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