ハンカチ王子の家庭に見る成功の秘訣! ~逃げ道があることが大切
親子鷹、成功例に共通することとは…… |
生田先生: その通りです。あらかじめ「違う道」も認めてあげているかどうか。例えば、この夏甲子園を湧かせた、早稲田実業の斎藤佑樹投手。彼のご両親の教育方針は、いろいろなメディアでもよく取り上げられていますが、家庭内に野球も勉強も大事にするという「ダブルスタンダード」を持っていることが大変効を奏している、いい例だと思います。
親が柔軟でなく、均一の価値観を子どもに押し付けてしまうと、その価値観に合わない子どもは「ドロップアウト」したと目されてしまいます。しかし以前、「『言ってはいけない』子どもへのひと言とは?」でもお話したように、子どもにとって、親が子どもをどう評価しているかは、多大な影響力をもっているのです。「ドロップアウト」と親に評価されてしまった子どもは、自尊心を持たず、自己効力感に乏しい状態に陥ってしまいます。ですから、子どもにとって他にも逃げ道があることが、とても大切なんですよ。
スポーツ界の「親子鷹」が成功している例は、親の情熱と子どもの適性、そして何よりも子どもが親の言うことをすんなり聞き入れる「素直さ」、それらがたまたまうまく掛け合わさって成立しているものです。
ガイド:なるほど、親子鷹には子どもの素直さが必要ですね。
生田先生: コーチがお父さんだとして、もしお母さんがお父さんの方針に反対していたとしたらうまくいかないでしょう。または、子どもが「お父さんの押し付けだ!」などと完全な拒否を始めてしまったら、その時点で「親子鷹」は成立せず、「不仲な親子」に変身してしまう可能性だってあるのですよ。
駒大苫小牧の田中将大投手のご両親も、とても上手にお子さんを導いていらっしゃると感じます。田中選手を連れて、あちこちのチームの練習風景を見学して回り、どのチームの監督さんなら任せられるかと、子どものために「師」を探してあげられたようです。
つまり、自分と子ども「1対1」の閉じた関係で子どもを育てるのでなく、信頼できるコーチを子どものために一緒に探し「輪」で育てること。このような「輪」によって「複眼」で育てると、一方によってストレスを感じても、もう一方でくつろげる逃げ場があるなど子どもを追い詰めない利点があります。家庭内では、「父と子」「母と子」に閉じず、複数が携わってお互いにフォローしたり、意見を述べたりすることで、価値観が固まってしまったり追い詰めたりすることを防ぐことができます。
亀田三兄弟も、兄弟の人数の多さがいいと思います。3人もいるため、他の兄弟たちにお父さんの目が行っているときに自分は息がつける。抜け道があるんです。あのお父さんと1対1だと、大変でしょうね(笑)。いい意味での競争意識も動機付けになりますし。
ガイド:「父と子」だけで閉じない関係、それがあの亀田三兄弟の強さの秘訣でもあるんですね。