「奥様」生活を手放し、資格取得へ
自分と子どもたちのために、資格が必要だ |
実家は、地元でも有名な福祉施設を経営している。住む場所があれば、あとは両親からの少しの援助と、夫からの養育費でやっていくことができた。ユカリさんは両親と同居しながら家事や施設の食事を担当し、生まれた末っ子を含める3人の子どもの育児をしていたが、施設に関われば関わるほど、これからの介護資格の必要性を痛感した。資格があれば、施設でも専門管理職として、スタッフをマネジメントできる。短大で幼稚園教諭の資格は取っていたものの、卒業後2年ほど一般職で会社勤めをして結婚退職をしていたから、介護に関する知識はほとんどなかった。
「これからの自分と子どもたちのために、家業を手伝うために、資格が必要だ」。
そう考えたユカリさんは、末っ子が幼稚園に入園し、初めてお弁当を食べる長い保育が始まった日に、子どもを送ったその足で介護関連の資格スクールへと向かい、入学手続きを取った。末っ子が幼稚園に上がった今、それまでいつも誰かしら子どもを連れて乗っていた車に、自分ひとりで乗っていることに気が付き、それまでを思い出して泣いた。
他の園ママたちがお茶だランチだと集ってはしゃぐ姿を尻目に、スクールで最短での資格取得を目指した。実家の両親の協力を得、資格取得要件である実地研修もこなし、見事介護関連の難資格に合格した。同じ年、両親と自分、そして3人の子どもが住むための2世帯住宅を新築。家具を揃えるとき、食卓のテーブルをみんなで一斉に囲める大きなテーブルに決めた。普通の家庭の3倍はある、大きなものだ。家族全員の食事を自分が担当し、別の意味でも「食べさせていく」という、ユカリさんの覚悟が現れていた。