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【インド洋スマトラ沖大津波】孤児が買われる 東南アジア養子縁組の闇

スマトラ沖大地震で、親兄弟や家を失った子供たち。その子供たちを武装兵力に徴用したり、海外へ連れ去って人身売買をしたりする大人たちがいる。災害孤児たちを、別の危険がじわじわと襲う。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド




2004年末のスマトラ沖大地震の悲劇で、
親兄弟を失い、家を失った子供たち。
その子供たちを武装兵力に徴用したり、
海外へ連れ去って人身売買をしたりする
大人たちがいる。
災害孤児たちを、別の危険がじわじわと襲う。




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インド洋大津波災害の爪痕


(C) Harsha De Silva (財)ケア・ジャパン
2004年末に突如として起こった、インドネシア、スマトラ島沖を震源地とした大地震。この影響で、沿岸の国々は未曾有の津波に襲われた。結果、インド、インドネシア、スリランカ、タイ、モルディブ、ミャンマー、セーシェル、ソマリアの沿岸地域など、500kmに及ぶインド洋沿岸が破壊され、被災者数500万人、死者総計約14万人(国連発表)という大惨事となる。累々と積み重ねられた死者、壊滅的な被害を受けた沿岸住居の悲惨な映像が、世界中に配信されたのは記憶に新しい。

つい先日にも地震後最大規模と言われる余震が起き、更なる死者を出している。

 
しかし、死者の3分の1、また被災者のうち150万人超を子供たちが占めていると言われ、ここにはインドネシア地域がもともと抱えている子供たちの労働力搾取の問題と絡まり、子供たちは極めて危険な状況にさらされているという。(⇒スマトラ沖地震 国連緊急アピール


避難民キャンプで横行する暴行


戦時下、社会規範が崩れ、異常な事態に直面した人々が常軌を逸した行動に出るということは決して珍しくはない。その例にもれず、津波災害の直後、被災地ではパニックに陥った避難民たちの中で、弱い者たちに対する暴行や、略取が見られた。

先行きのわからない当面の生活を支えようとしたのか、被災地では盗みが当然のように横行した。海岸域に積み重なる夥しい数の遺体から、貴金属を取り外して持っていく者が後を絶たなかったという。また、災害や身近な者の死というショックに耐えられなかったのか、避難民キャンプで、男性が女性を暴行するという事件も報告された。

津波は、人々の心にも無残な爪痕を残していったのだ。


暗躍する人身売買ブローカー


親兄弟や家を失った幼い子供たちが、惨状を必死で理解し、生き延びようと混乱する中、子供たちを別の危険が待ち受けている。

 
ユニセフのスリランカ事務所の報告によれば、武装組織「タミル・イーラム解放の虎」が被災後の一ヶ月間に、被災者を含む子ども40名を少年兵に徴用した。

「里親」と称する見知らぬ大人たちが子供たちを国内外に連れ出して、労働力として搾取・虐待・人身売買するケースも後を絶たない。子供の手を引く大人が「これは自分の子供だ」と言い張るのに対し、子供は「この人は知らない人」と答えて連れ去りが発覚し、寺院や難民キャンプに保護された子供も少なくないという。

また、被災した子供たちを保護する活動が、悪用されるケースもある。

やはり壊滅的な打撃を受けたスリランカで、ある仏教系寺院が孤児たちを収容する活動を始めた。この活動がメディアに取り上げられ、子供達の映像が電波に乗って世界中に配信された。すると世界各地から、NGOやボランティアを名乗り、活動を支えるために寄付をしたいとの申し出が数百件もあった。ところが、連絡がつくと「善意の寄付者」であるはずの彼らは一転、寄付という名の下に金を出す代わりに、子供を海外へ連れ出したいと要求し始める。

子供を海外に連れ出す理由は明確にされないため、これらの申し出は断ることになるのだが、後にこの「善意の寄付者」たちの多くは、海外の人身売買組織と通じたブローカーであることが判明する。


アジアの子供たちがヨーロッパに買われる?


東南アジア地域では、児童の人身売買は、以前から指摘されてきた闇の問題でもあった。

貧しい地域に生まれた子供たちは、幼い頃から生きる手段として労働することを強いられる。男子はまだ3、4歳の頃から道で盗みを働いたり、物乞いをしたりする子供もいるが、体ができてくる8歳前後になると、中近東へ馬のレースの騎手として売られたり、召使、建設補助などの労働力として世界各地に売られていく。

一方で女子は、ほとんどが性産業に従事させられる目的で、海外に売られる。その行き先は、ヨーロッパであるという。スウェーデン、オランダ、ドイツ、フランスなどの、「子どもが欲しくてもできない夫婦」の元に養子として送られたはずが、行方が分からなくなるのである。1歳にも満たない赤ん坊まで売買されてきたというから、その闇の深さが窺えるというものだ。
(⇒ユニセフ「反・人身売買キャンペーン」


「最も困難な仕事」ユニセフ事務局長の言葉


ユニセフ事務局長、キャロル・ベラミーは、津波災害後、国連機関の長のトップを切って、現地時間2005年1月2日、スリランカの首都コロンボに到着。同国東海岸と南部の被災地、翌3日には北部の被災地を訪問した。

スリランカを発つ直前に、首都コロンボで開かれた記者会見で、ベラミー局長は次のような言葉を残している。

(c)UNICEF video
「しかし、『最も困難な仕事』は、実はまだこれからだということを肝に銘じなければなりません。まだ救援活動が行き届いていない地域があります。そして、生き残った人たちの苦しみは、言葉に出来ないほど深刻です。」

「まず、子ども達を生存させるための支援が必要です。安全な飲料水、適切な衛生環境、栄養、基礎的な医療ケア。これらは基本中の基本ですが、その重要性は強調しても強調しすぎることはありません。津波を生き延びた子ども達を生き延びさせ、健康でいさせることが、私たちの最重要課題であるべきです」

「子ども達を搾取から守ること。今回のような家族が散り散りになり、人々の収入が無くなり、尊厳や希望を失ってしまうような混乱状態では、子どもは普段以上に搾取の被害に遭いやすくなります。私たちの救援活動は、ですから、そういった子どもの脆弱性を軽減し、子ども達が再び世の中に信頼を持てるようにするような形で計画され、実施されなければいけません」


スマトラ沖の地震は、構造的な問題を抱えた貧しい地域を襲った災害であるゆえに、その被害は甚大で深刻だ。一過的な災害救助以上の、私たちの長期的な関心と支援が必要とされている。


財)日本ユニセフ協会では、被災地域におけるユニセフ活動を支援するための募金を受け付けています(この募金は寄付金控除の対象となります)。皆様のご協力をお願い致します。
スマトラ沖地震・津波緊急募金(ユニセフ インターネット募金)

そのほかの支援募金活動リストはこちらから。(⇒「郵便振替・オンラインでできる イラクの子供たちへ緊急募金 人道支援機関募金リスト」

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