リピーター獲得戦略
あまりの人気ぶりに、商品カタログさえも無料配布できない状況だ。「期間中、お洋服15,000円購入でカタログプレゼント」というキャンペーンが張られると、開始から2～3日でカタログがなくなるというから驚く。こういったキャンペーンを細かく伝えるチラシ（フライヤー）戦略や、一度でも来店した顧客に、来店後すぐ送付するDM戦略などで、リピーターをしっかりと獲得している。
さらに、新しい洋服を購入した際に、その服を着て店内で写真を撮影し、店頭に掲示されるというサービスも提供されることがある。親子の「プチセレブ感覚」を刺激し、特に子供に「もう一度行きたい」という気持ちを起こさせる、巧みな商法である。
こうした、「お買い上げ○○円以上で」参加できるというイベントは、日本全国のナルミヤショップで年中絶え間なく行われている。オリジナルグッズが当たる「抽選会」、購入した洋服を着てヘアメークをしてもらった上に写真を撮影してもらえる「撮影会」であるとか、ブランドのカリスマ少女モデルによるファッションショー、さらにそのモデルとの「握手会」、「サイン会」など、枚挙に暇がない。消費すれば自分もスター感覚を味わえるという、こうした顧客と広告モデルとの距離が非常に近い「素人のプチスター化」が、TVやメディアへの憧れの強い小中学生をつかんで離さない魅力でもあるようだ。
「シックスポケッツ」が増長させる、1人10万円のフルコーディネート
ジュニア服とは、全身フルコーディネートすれば10万円に達する世界である。店内には帽子から靴まで、まさに頭からつま先までカバーする商品が用意されており、スタッフは客の様子を見ていつでもフルコーディネートを提案できるようになっている。Tシャツもジーンズも、平均一枚1万円前後するものだが、これも昨今の「シックスポケッツ」（一人の子供に、両親とそれぞれの祖父母6人が物を買い与える現象）により、子供が欲しいと言えば大人たちは「高いなぁ」とぼやきつつも、いずれ6人のスポンサーの誰かが財布を開けるような仕組みになっている。
親をも満足させる質の高さと経済性
しかし、ジュニア服はむやみに高いわけではない。消費に慣れた両親や祖父母の肥えた目を十分に満足させる、品質の良さは特筆ものだ。大人用の服より何回りも小さいものではあるが、どの商品にも「遊び糸（ほつれ）」は、まず見つからない。シャツ・トレーナー・パーカなどのトップスはすべて肩の内側の縫い目に透明なテープが施してあり、肩のシルエットが崩れないように工夫されている。ジーンズやパンツ類は、子供の腰周りの成長に合わせて内側のゴムベルトで調整が効く、アジャスタブル仕様だ（今春・夏物からゴムにいくつもの穴が開いており、ちょうどいい位置をボタンで留める方式に）。
この縫製の良さ、生地の良さのおかげで、何度も洗濯してもへたらず、首周りや袖周りも伸びない。子供の通学着として着せるには理想的である。また、多少の使用では商品が古びないので、姉妹でお下がりにしてもおかしくないし、ネットオークション・フリーマーケットなどでもニーズがあり、流通性が高い。母親たちの間では「意外と経済的」という評価さえ得ているのが、このジュニア服なのだ。
さらに、ジュニア服はサイズ展開にも心憎い技を見せてくれる。かつて子供の140cmといえば、小学校高学年の平均身長程度だったが、現在では小学校2年生くらいからこのサイズを必要とする女児が出てきている。ところが、従来の子供服は130cmを超えた途端に品数がグンと少なくなり、140～160cmは大人用の服との間の「空白地帯」。数少ない中で選ぶにしても、それらは大抵「大人のデザインをちゃちにしたもの」か、「お子様服を大きくしたもの」だった。
ナルミヤは、まさにこの140～16cmの間でS・M・Lのサイズ展開をしている。さらに今夏、LL（165cm）の品揃えを強化し、発育のいい現代の小・中学生が安心して着られるようにした。この時期、少女たちは身体のラインの変化も敏感に気にし始める。小学校高学年から中学生の少女たちのオシャレ心を刺激し、かつ十分に満足させる商品ラインナップなのである。
⇒次ページ：生活のあらゆる場面に「ナルミヤ」／アメカジ世代母もとりこに／「ナルミヤ」的ビジネスモデル
