オーストラリアの小学校事情に異変?
ハワード首相主宰の研究会では、小学校を5時まで
延長することを検討しているとか。
その背景には、増える共働き家庭への配慮があるのです。




子育て家庭の60%が共働き!

日本から見れば、南半球のオーストラリアはのんびりした印象。しかし、なんと子育て家庭の60%が共働きというのですから、日本とは格段の差です。子育てに関しては夫の家事分担率も高く、育児施設、育児休暇も充実しており、女性の社会進出は目覚ましいのです。

就学前の乳幼児(生後すぐの乳児から就学前までの幼児)に対しては、そういった共働き家庭をサポートするシステムがかなり整備されています。日本の保育所と同じような「ロングディケアセンター」は、午前8時から午後6時までが中心。一部では朝6時半からや、午後6時半までなどの延長保育を行っている園もあり、柔軟性に富んでいます。


小学校も延長保育?

このように、共働き家庭への配慮から、小学校の時間も見直して、5時まで延長しようというのが、今回のハワード首相の研究会報告です。

現状では朝8~9時に始まり、午後2時半~3時に終わる小学校ですが、日本とあまり変わりませんね。ところが、日本とは異なる、ある事情が。なんとオーストラリアでは14歳未満の子供を独りで留守番させるのは違法。オーストラリアの義務教育期間は6歳から15歳(一部の州では16歳まで)ですから、ほぼ義務教育の間じゅうです。また、安全上の問題から、子供たちが校庭に残って遊ぶのも禁じられています

したがって共働き家庭は、子供が小学校に上がってからも、放課後に子供を独りにできず、頭を悩ませられます。「アフタースクールケア」という学童保育のようなサービスを利用するか、ベビーシッターを雇う、または両親のどちらかが仕事を早めに終えて学校に迎えに行くことを余儀なくされるのです。

小学校が3時までという現行の制度はこのような現状に即しない、というのが研究会報告の根拠となっています。


オーストラリアの経済状況

多文化主義で知られるオーストラリア。オーストラリアが1970年代から80年代にかけて「白豪主義」を捨て、アジア系の移民を積極的に受け入れる方向に転換し、多様な民族集団の民族性を尊重した「多文化主義」に基づく社会へと変化してきたことは評価されてきました。

しかし、オーストラリアはそのイメージとは裏腹に、深刻な問題を抱えています。「環境大国」のイメージさえある、広大な面積を誇るオーストラリアですが、実際にはハワード首相は、米国および途上国の参加なしには京都議定書を締結しないと表明しました。

オーストラリアは環境よりも経済を優先しなければいけない状況にあるのです。その理由の一つに、国民の約11%の人々が貧困層と言われているという、深刻な貧困問題があります。

《引用:AP通信2004/03/14付記事》

オーストラリア野党第一党である労働党が実施した最新の調査レポートによると、オーストラリア国内の貧困問題はかつてないほど悪化しており、国民の5人に1人が自分の子供に食事と服を与えるにも困窮している状態であるという。

(英BBCの関連記事では、オーストラリア人の20%は自分の子供に薬も教科書も買うことが出来ないと表現されている)

貧困層を構成するのは先住民アボリジニ、無職者、障害者、母子家庭の親と子供、お年寄り、移民と難民であり、貧困の主原因は失業である。



「共働き家庭」支援

このような経済政策的視点からも、増加する共働きの家庭を支援する必要があるのでしょう。しかし、日本の20倍という広大な国土ですから、学校への登下校だけで、スクールバスで片道2時間という子供もいます。学校時間を延長した場合にこのような子供はどうするべきか、また延長した時間でどんなプログラムを組むのか、教員たちの労働時間をどうするのか、など課題は山積しています。

しかし、日本の共働き家庭の事情と比べると、オーストラリアの場合は深刻さの度合いがちょっと違う印象ですね。全国の小学校を5時まで延長というインパクトのある政策が提案されるのも、事情あってのことと理解できます。しかしこういった試みは、今後の家庭のあり方が推移していく中で、評価されるべきことでしょう。


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