これまで、サルの研究から安易に引き出されたという
「3歳児神話」を否定する研究は数多くありましたが、
3歳児神話を統計学的にきちんと否定する研究はありませんでした。
このたび、厚生労働省が初めてこれをきちんと実証する
研究を発表しました!
■ワーキングマザーに朗報
これまで、3歳児神話はまやかしだという研究は数多くありました。実は、母となる女性たちが振り回され続けた3歳児神話とは、サルの研究から安易に引き出されたものに過ぎなかったのです(参考:ハーロウのアカゲザル「隔離飼育」実験、1971)。しかし、3歳児神話を統計学的にきちんと否定する研究はありませんでした。
ところが、このたび厚生労働省研究班が5年間の追跡調査を取りまとめ、これを実証しました。これほどまでに精密な研究で3歳児神話が反証されたというのは、発達心理学会的にも初めてです。
これで、家庭の保育は「量より質」ということが実証的に示されたわけです。
《引用: 5月16日15時付 共同通信》
「家族で食事」子供に大事 保育園で5年間追跡調査
保育園で過ごす時間の長さは子供の発達にほとんど影響せず、家族で食事をしているか、親に育児相談をする相手がいるかなどの要因が発達を左右する。全国の夜間保育園の園児らを5年間追跡した厚生労働省研究班が16日までに、こんな結果をまとめた。
一定の基準を満たした認可保育園に限った調査で、ベビーホテルなどは含まないが、長時間保育の影響を調べた研究は世界的に珍しいという。
研究の中心となった浜松医大の安梅勅江教授(発達保健学)は「短時間でも親子が適切に触れ合い、質の良い保育をすれば子供の発達に問題はないことが統計で示された」と話している。
研究班は1998年から毎年、全国の夜間保育園約80カ所の園児3000人前後の発達調査と親のアンケートを実施。今回は98年と2003年の調査にどちらも回答した185人の発達と保育時間、育児環境などの関連を分析した。
185人中、1日11時間以上の長時間保育の子供は28人、それ未満の通常保育の子供は157人で、保育時間の長さではコミュニケーションや子供の運動能力の差はなかった。
一方、家族で食事をする機会がめったにない子供はある子供より、他人の話し掛けに答えるなど対人技術の発達が遅れるリスクが70倍、理解度が遅れるリスクは44倍高かった。
■「クオリティータイム」が見直される
実はこのように、ワーキングマザーやファザーが帰宅後に子供と密接な時間(クオリティータイム)を持つことで、むしろ質の高い保育をすることができる、子供の発達に良い影響があるという考え方は、80~90年代の米国でずっと提唱されていました。
クオリティータイムとは、キャリアウーマンの母親が子供を長時間保育所に預けていても、家庭で両親がしっかりと子供と向き合い、一緒に食事を取り、絵本を読むなどし、対話をすれば、子供はきちんと発達していくという取り組みです。
しかし、その後の突然の大不況で、リストラ(ダウンサイジング)の嵐が吹き荒れると、母親が長時間仕事をすることは子供にとって良くない、"Back Home"(家庭へ戻ろう)という気風が台頭し、早期退職に応じる母親が急増して、世論は「クオリティータイム」を否定する方向へ走ってしまったのでした。
これをきちんとした形で実証する研究がなかったために、幼児の発達心理学上も「クオリティータイム」は宙ぶらりんとなったままでした。しかし、今回の厚生労働省の研究で、見直されることとなりそうです。
子育てとは時間の長さではなく、むしろ「家族の食事」の時間の影響が大きいという点からも、今後一層「食育」や「スローフード」への注目が高まりそうですね。
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