エッセイスト、酒井順子さんによる『負け犬の遠吠え』
話題になっています。著者自ら、「どんなに美人で仕事ができても、
『30代以上・未婚・子ナシ』は女の負け犬!」と、あえて言ってみせる
潔さが好評を博している模様。しかし結婚・出産はとりあえずしている
子育てママ、突然「勝ち犬」と呼ばれても、戸惑うばかりですよね?





『負け犬の遠吠え』
講談社
本体 1,400円



「勝ってる」のか?

「どんなに美人で仕事ができても、『30代以上・未婚・子ナシ』は女の負け犬!」と著者自ら自虐的に断言してみせる、酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』。

しかし、突然「勝ち犬」と称されることになった、「30までに結婚→出産」組のオンナ達は、正直、戸惑いを隠せない。

「勝ち犬」とかってゆーと、こーゆーのとか

こんな感じ?


あ、あまりにも現実と違いすぎる……どっちかってーと、子供といる母親の現実って、精神的にも肉体的にもこんな感じだ。

子育ては葛藤だらけだし、自分の生き方やキャリアだって課題が山積みになる。多分、それと向きあってあーでもない、こーでもないとじたばたするのが子育て世代なんだと思う。



『VERY』な世界・『STORY』な展開

ところが「勝ち犬」というと、

・東京23区内(特に港区・渋谷区・目黒区・世田谷区あたり)や、関西では芦屋周辺に住み
・年収の高い夫に支えられて
・子育てを「心から」楽しみつつ
・ファッションは常に気を使い
・買い物も自由自在
・インテリアのセンスも抜群
・エステや化粧品で自分のメンテナンスも怠らない
・専業主婦


なんていう、カワサキ的にも「どーなの、それ?」と突っ込みたくなる、あまりにもステレオタイプな『VERY』(注:光文社の20後半~30代子育て世代向け女性誌)の読者モデルみたいな女性像が想定されているようだ。

そういう人は、さらに子育てが一段落すると、趣味のフラワーアレンジメントや料理、テーブルコーディネートなどの教室を「主宰」し、『STORY』(注:光文社の40代向け女性誌)な自己実現が始まるのだ。


負け犬の「負けるが勝ち」

勝ち犬たちは、常に「私の幸せ」を追求している。良くも悪くも輝くことに貪欲なのだ。しかし、それは飽くなき闘いである。「あの人みたいに」「あの人よりも」輝きたいなどということになれば、「幸せ」は自己満足を超え、どこまでも続く苦行のようなものだ。

誰もがそういう欲望を持っているわけではない。でも、「努力すればするほど良くなる」と信じている人に限って、本当はそういうのに憧れているかも知れない。だから、ちょっと背伸びした感じの『VERY』も『STORY』も売れるのだ。

それを、ぽーんと「負け犬」宣言をすることで、放棄した人は賢明だ。幸せの形なんて人それぞれ(個々の適性だってあるし)なのに、どこかでいろんな立場のオンナ同士が、勝ち負けを決めようとしている。

勝ち負けを決めたがるオンナの習性を巧みにすくい取り、「勝ち犬・負け犬」の構図に仕立て上げた酒井順子さんの着眼は見事。何が「勝ち」なのかではなく、自分の生き方を客観的に笑い飛ばすヒントとして、面白い本だと思う。



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