オスの子育てが常識のカエル界
カエル界では、オスだけが子育てする種がかなりいる。ヨーロッパに住むサンバガエルは、卵塊(あの透明チューブに入った黒い玉ゼリー状のヤツ)を足に巻きつけて運ぶ。水につけて運ぶことで、卵が乾燥しないようにしているのだ。パパの心配り、だよね。また南米のマダラヤドクガエルやイボヤドクガエルは、オスが背中にオタマジャクシを載せて運ぶけど、メスは何にも世話をしない。
パタゴニアに生息するダーウィンハナガエルは、オスの声嚢(せいのう……声を出す器官)がのどからお腹の下までビヨ~ンと伸びていて、メスが産卵したらそれを舌ですくい上げ、声嚢の中に取り込んで育てる。ここで変態した子ガエルは、ある日父親のお腹の中から外界に飛び出していくのだ。
鳥類はクレイマー・クレイマー
南米やパタゴニアに生息するレアは、ダチョウと同じように飛べない大型鳥である。メスはオスがせっせと作った地面の巣に卵を産んで、さっさとどこかへ行ってしまう。残されたオスは自分で抱卵(卵を温める)し、かえったヒナをみんな引き連れて、草原で食べ物の取り方を教える。突然の雷雨があればヒナを守るし、敵が来ればヒナを守って闘うのだ。
オーストラリアやニュージーランドに住むオーストラリアツカツクリという鳥は、大足類と呼ばれる通り、巨大な足を持っている(カワサキと同じだな)。このオスは、アルゼンチンやチリの風の強い草原で、林の中に土だの枯葉だの最高5トン(!)もの材料をせっせと運び込み、直径12メートルもの巨大な愛の巣たる塚を作ってメスの産卵を待つ。
しかし卵を産みつけたメスは、そのままどこかへ逃亡。残されたオスは卵を精魂込めて世話をする。土を盛り上げたり、枯葉をかけたりして、外気温に合わせてその量を調節しながら塚の中の温度を一定に保つ努力を続けるのだ。この何ヶ月もの地道な作業の結果、ある日ヒナたちがパッカリとかえり、外界に飛び出して行くのだけれど、四方八方へ走っていってしまって父親を振り返りもしないとか。
出産するオトコ―タツノオトシゴ
有名な話だけれど、タツノオトシゴのオスは出産する。なんかアーノルド・シュワルツネガーの映画『ジュニア』みたいだよね。タツノオトシゴのオスは、腹部に育児嚢(いくじのう)を持っていて、メスはその中に産卵するのだけれど、卵は入り口から通過する時に受精されて、育児嚢の中で発生するというわけ。子どもがかえると、オスのお腹の中から一匹ずつ「出産」されて飛び出していくとか。
魚類では他にも、イトヨ・ハナカジカなどのオスは、自分の縄張りの中にメスが産卵した上に放精し、保護するという。(魚の世界にも『甲斐性』というものがあるらしい。ふ~ん。)
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