iPadと純正ケースの関係を考える

Apple「Apple iPad Case」3,980円(税込)

かつて、iPodが登場した時、積極的にケースを作ったのは日本だけでした。日本人はカバーするのが好きだとか揶揄されつつも、指紋がつきやす く、傷も付きやすかったiPodは、ケースに入れることでファッション性も向上。さらに、デザイナー達のiPodへの愛情が、より使いやすく、機能的で カッコ良いケースを次々と生み出し、海外からの問い合わせが増えていきました。

左開きのブックタイプ。マイクロファイバーと強化パネルを使った、ジャストサイズのスリムなケースだ。

いつの間にか、新しいiPodが出るたびに、海外のメーカーからも当たり前のようにケースが発売され、それはiPhoneにも引き継がれます。そしてiPadでは、発売前にApple純正のケースも同時に発表され、しかも、それは多機能のアイディアに溢れたものでした。iPadの薄さをなるべく殺さない方向で作られたケースは、実際、保護機能はほとんどないと言って良いものです。しかし、滑りにくい素材を使って、しっかりとホールドできるように なっていること、画面に埃や傷が付きにくくなる効果はあること、そして何より、スタンド代わりになる機能が搭載されていることなど、iPadの使い方をケースの形で提示するようなものになっています。

iPadの薄さを損なわない、「使うため」のケース。右開きだったら、もっと持ちやすかったと思う。

基本的にAppleは、自社製品に付いて「ケースが要らない、または、ケースに入れない状態で使うことが、その製品のポテンシャルを最大に発揮で きる」と考えているように思います。だから、持ち運ぶためのケースは作っても、今回のような「使うため」のケースを発売前の段階から投入するのは、かなり異例のことと言えるでしょう。

ムービーなどはこのポジションで立てると見やすい。操作ボタンやスピーカーなどは全て開けてあるので、ケースに入れたままで全ての機能が使える。

実際に使ってみると、Appleのこのケース、かなりよく出来ています。iPadにジャストサイズで、しかもサイドからケースに差し込んだ後、そこに蓋を するフラップが付いていて、iPadがケースからこぼれることがないように配慮されています。また、iPadを二段階で立てられる仕様は実用的でとても便利です。ビデオなどを見るときの、横位置に屹立するパターンと、キーボードなどを打つ時に便利な、横位置で上から見下ろす角度でやや上部が持ち上がっているパターン。iPadを使う際に、もっとも頻繁に使われるであろう角度が、この二つでしょう。しかも、このケースがあることで、iPadの使い方 を提示することが出来る訳です。

キーボード入力などを行う時は、このポジションで使う。このケースを見ると、Apple的には横構図で使うのが基本なのかと思ってしまう

ただ、モノとして見たとき、色々と残念な点が多いのも確かです。まず、その質感ですが、何となく学習雑誌の付録的な、工作的なムードのある段ボール的な素材感とフォルムなのです。その上で多機能なので、まるで紙で作った試作品のように見えてしまいます。また、一度入れたら簡単には出せないのも、ケースとして見れば欠点にならないのかも知れませんが、iPad用のケースとして考えるとやや残念だと思うのです。iPadは裸で使いたくなるようなツールですし、出し入れがスムーズな方が嬉しいのです。

使っていると、実用的なケースというより、やはりiPadのデモのためのツールに思えてきます。これは本来は付属するべきモノなのかも知れません。iPad練習用グッズ、というのが、このケースの位置づけではないかと思うのです。

iPad用革ケースの諸問題と解決策としてのSimplism

Simplism「Shoulder Leather Case for iPad」5,980円(税込)
カラーバリエーションは、写真のディープレッド(左)、キャメル(右)の他、チョコレートブラック、スノーホワイトがある。

一方で、iPadケースには良い素材が使いにくいという問題もあります。これは多くの革製品のデザイナーさん達が口を揃えるのですが、iPadで革のケースを作ろうとすると、価格が上がり過ぎる、というのです。iPadが入るだけの量の革を使えば、それが良い革であるほど、価格は跳ね上がるんですね。もちろん、高くてもいいから良い革の使いやすいケースを、と望むユーザーも多いとは思うのですが、商品として流通させられるほどの売れ行きにはならないのですね。iPhoneケースなら、良い革を使っても、モノが小さいので価格も抑えられます。しかし、iPhoneほどには絶対数として売れていなくて、しかも高価となると、それが良心的なデザイナーさんや職人さんであるほど考えてしまうようです。解決策としては、革を部分的に使う、という方向でアイディアを練るという方が多いようです。

iPadのホルダー兼ショルダーバッグ、といった感じのケース。iPadのカバーを最小限にしてスリムなシルエットを保っている。

そんな中、早くも革のケースを二種類も発売しているSimplismは、その価格と出来のバランスの良さからも、相当頑張っていることがうかがえます。例えば、この「Shoulder Leather Case for iPad」ですが、このケースは、ケースであり、そのままiPadを肩から提げて歩けるカバンでもあります。つまり、iPadをケースに入れるべきかという議論に対し、ケースとして使えて、尚且つ、カバンとして持ち歩いて、使う時はカバンから取り出して使ってもOKというスタイルを提案しているわけです。ガイド納富は、その提案を「ケース」という形で行った事がとても素晴らしいと思うのです。

フラップを背面に回すと、キーボード入力に丁度いい感じの傾斜が付く。ボタン類はもちろん、スピーカー部分にも穴が開いていて、ケースのままでフル機能が使える。

しかも、牛革をふんだんに使いながら、実売価格5980円と、かなりの低価格に抑えているのも凄い事です。確かに、高級皮革ではないし、全てが牛 革ではないのですが、大人が持っても恥ずかしくない質感をキープしていますし、染めの発色も中々のものです。また、どうしても革のケースだと大きくなってしまって、iPadの薄さが損なわれてしまうのですが、このケースの場合、カバンとしてこのまま持ち歩くので、ケースとしての厚みが気になりません。むしろ、薄く見えるほどです。実際、この「薄さ」というのはiPadの場合、かなり重要な部分で、ケースに入れたiPadをカバンに入れて持ち歩こうとする場合、普通のケースに入れると、単なるネットブックを持ち歩くのと似たような感覚になってしまいます。それでは、iPadである意味が薄くなってしまうのです。

ストラップを肩に提げたままで画板のようにiPadが使えるのが便利。革のケースとしてはスリムに仕上がっているので、片手で持っての操作も可能。

特に、革のケースは厚みが出るのを避けられません。Apple純正が質感を犠牲にして薄さにこだわったのも、iPadでは薄さが大事だからでしょう。ただ、薄いケースだと保護ケースとしての機能を持たないのも確かで、それでは困るユーザーも多いわけです。ケースに入れる=保護、というのは当た り前の考えですから。その意味でも、Simplismの「Shoulder Leather Case for iPad」は 良く出来ています。革もしっかりしていて、保護ケースとしての機能も果たしていて、しかも出し入れはスムーズなので、裸での使用にも対応します。また、縦開きなので、左右にフラップ類がなく、そのおかげで片手で側面を持って作業する場合も、厚みがそれほど気になりません。ショルダーストラップがあるので、画板的に使えるのも魅力です。

次のページでは、保護ケースとしての革ケース、そしてシリコンケースについて解説します