
「LAMY safari KURUTOGA inside」は、LAMY社が三菱鉛筆グループとなってからの両社のブランドを組み合わせた製品としては、2025年1月に発売された「LAMY safari JETSTREAM inside」に続く第2弾。前回は、従来の「LAMY safari ボールペン」にも使える、ジェットストリームのリフィルが製品の中心だったのですが、今回は、軸のデザインや内部構造にも三菱鉛筆とLAMY社のコラボレーションが感じられる、LAMYの新製品と言えるものに仕上がっています。
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LAMYのデザインと三菱鉛筆の技術の双方を活かすプロダクトを
LAMY safariのシャープペンシルといえば、随分前、アニメ『けいおん!』のドラムスを担当していたキャラクター、田井中律が使っているシーンが描かれたことから、ちょっとしたヒット商品になりました。
ただ、LAMY safariといえば主力製品は万年筆やローラーボールで、シャープペンシルの印象は薄かったといいますか、シャープペンシルに関しては日本製が機能的に圧倒的に素晴らしかったので、LAMY safari KURUTOGA insideのデザインはLAMY safariを継承しつつ、クルトガの機能性を融合したというのは、三菱鉛筆とLAMY社が組んだ時からユーザーが待っていた製品だと言えそうです。
「LAMY社は、どちらかというとデザインを主軸に置いているため、そこに三菱鉛筆の技術を分かりやすく組み合わせるのであれば、弊社の中でも基幹となる技術を搭載した『ジェットストリーム』ではないかという発想が出てくるのは必然でした。そして第2弾としては、やはり私たちならではの特徴的な技術が詰まった『クルトガ』がふさわしいのではないかというのが、1つの考え方でもありました」と、今回の製品の開発を担当された三菱鉛筆株式会社商品開発部の藤川恵汰さん。
互いの得意分野を掛け合わせて幅広い層にリーチ

ユーザーとメーカーの思惑が一致した製品だったため、LAMY safari KURUTOGA insideは発表直後から話題になり、透明軸のビスタは特に品薄状態に。出遅れた筆者はLAMY製品では持っていなかった軸色のブルーを購入しました。
「筆記具としてのディテールなど、LAMY社が強くこだわっているところは私たちも学ぶことが多いです。一方で、書き味や筆記性能などは三菱鉛筆も自信のあるところですし、特にシャープペンシルは、ヨーロッパでは一般的な筆記具というより製図や図画に使われるという事情もあるため、互いの得意なところを組み合わせたというところは大きいです」と藤川さん。
また、LAMYというブランドは、日本では高級筆記具のイメージが強く、どちらかといえば年齢が高い層に使われている傾向があり、一方で、クルトガは主に学生に使われている製品です。そのため、LAMYとクルトガが合わさることで、学生から筆記具好きの大人まで、幅広い層に届く製品になるのではという狙いもあったようです。
“safariの新製品”として設計し直した

しかも、今回の製品は、単にLAMY safariの中にクルトガのメカニズムを入れたものではなく、かといって、クルトガに合わせて三菱鉛筆がsafariに似た軸をデザインしたというものでもない、LAMY社と三菱鉛筆が作った“LAMY safariの新製品”になっているのだそうです。
「比べてもらうと分かるのですが、デザインも従来のLAMY safariのシャープペンシルとは少し違っています。分かりやすいところでは、ペン先部分が黒色だったのを軸色に合わせていたり、ノックカバーに付いていたラバーリングをなくしたりしているんです。ただ、これも、私たちから『これを黒くしたい』とか『黄色くしたい』とリクエストを出したというより、LAMYブランドの商品として、LAMY社が考えていることをクルトガに当てはめるならどういう形がベストなのか、LAMY社側と綿密にやりとりしながら作っていったんです」と藤川さん。

確かに、見比べるといくつか外見上の違いがあります。特にペン先部分が軸色に合わせてあるのは大きな変化なのですが、個人的には、最近の筆記具は軸からペン先まで同じ色のデザインが主流なので、あまり違和感はありませんでした。よく見ると、色だけでなく形も少し変わっているようです。
「ペン先の形状は、クルトガのメカニズムを入れるために変更したというのもありますが、LAMYの中でも、LAMY safari自体がもう40年以上前の製品ですし、今のデザインの潮流も含めて再設計してもらったというのも背景にあります。実は少し前にLAMY safariのデジタルペン『LAMY safari note+』が発売されたのですが、それと今回のモデルはペン先の形状が似ているんです。この時代にまたLAMY safariで何かを生み出していくにあたって、時代に合わせてリファインしていくという考え方がブランドとしてもあったのだろうと思います」と藤川さん。
LAMYのミニマムデザインをシンプルにリファイン

確かにsafari note+は軸色とペン先の色は同じで、ペン先の形状も、今回のKURUTOGA insideと似ています。実際、軸色とペン先の色がそろっている方がよりカジュアルというか軽さがあって、LAMYとしても、そこに新しさを感じているということかもしれません。
また、LAMY safariは途中でクリップが黒から銀色に変わったのですが、KURUTOGA insideのように軸色と同じペン先だと、銀色のクリップの方がバランスがよく見える気がします。
ゴムリングに関しても、LAMY社との話し合いの末、デザイン的にも機能的にも余分なのではないかという結論に至り、今回のようなシンプルな形状になったとのことでした。ペン先もそうですが、LAMY safariのアイコンになっている部分は変えず、細部のリファインで、よりミニマルなデザインになったという感じですね。それはLAMYらしいという気もします。
「SNSなどでは、三菱鉛筆がデザインを主導しているのでは?というご意見も散見されますが、決してそういうわけではありません。LAMY社のデザインに対する考え方の深さや、思想、哲学の部分をリスペクトしながら、それを技術的に活かすにはどのような形状にすべきかという議論を重ねて製品を作っています。今回の『LAMY safari KURUTOGA inside』も、日本に合わせてローカライズしたのではなく、グローバルに共通する仕様で作っています」と藤川さん。
芯がブレにくい最新の「クルトガ KSエンジン」を搭載

クルトガのメカニズムとしては、最新の「クルトガ KSエンジン」を使用しているのだそうです。軸は設計し直して、中身は既存部材を使っているため、その意味では、「JETSTREAM inside」とは逆なんですね。メカニズム上、ペン先が微妙にブレるクルトガの欠点を最小限に抑えた最新のメカニズムを採用しているのは、実用面でも妥協はしないという姿勢の表れなのでしょう。
また、デザイン面でのクルトガらしさとして、軸にはクルトガのメカニズムが正しく動いていることを見せるための小さな穴が開けられています。「これはクルトガのアイコンなんです」という藤川さんの言葉通り、この穴もクルトガというシステムの一部分として、軸のデザインに組み込むことが重要だったのでしょう。

「KSエンジンを入れるためには、軸を再設計する必要があったため、LAMY社が基本デザインを行いつつ両社で設計をしました。既存のLAMY製品とは違い、Made in Japanですが、LAMY社と打ち合わせをしながら進めていますし、これはあくまでもLAMYブランドの製品として発売しています」と藤川さん。
クルトガとして見ると、4180円という価格は高いのですが、LAMY safari シャープペンシルは3740円で売られているわけで、そこにクルトガのエンジンを搭載したモデルと考えれば、4180円は妥当な価格と言えます。三菱鉛筆のクルトガの新デザインではなく、LAMY safariの新機能搭載の新製品なのです。







