日常的に使いやすい財布の条件を全てクリアする
m+「MILLEFOGLIE オレンジ25」 |
財布に求められる「使いやすさ」は、何より、中の紙幣やコイン、カード類の出し入れのしやすさでしょう。しかし、例えば長財布は紙幣とカードの出し入れには向いていても、コイン入れは無いし、スイカなどの交通機関のカードの収納には向きません。また、通常の二つ折り財布は、コインを優先すれば紙幣が取り出しにくくなり、紙幣を優先すればカードの収納数が減り、カードを優先するとコイン入れが小さくなるなど、何れかの機能を優先させるようにしないと、中途半端な財布になってしまいがちです。
m+のウォレット「MILLEFOGLIE」は、そんな財布の「使いやすさ」を構造のレベルで実現した、ちょっと類を見ないデザインになっています。従来の財布の構造やデザインを、全く踏襲することなく、その構造をゼロから組み上げたような仕上がりは、一級建築士であり、皮革デザイナーでもあるm+のデザイナー、村上雄一郎氏が何度も試行錯誤して作り上げたそうです。ただ、あまりに斬新なスタイルなので、ガイド納富も実際に使って見るまでは、ちょっと目先が変わった財布、という感じで見ていました。そのくらい、その外観は、シンプルで静かな佇まいなのです。
意外な程入る収納量と型くずれしないデザイン
紙幣は財布の外周に収納。スイカも左側の紙幣の下に。
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使ってみて、まず感動したのは、その収納力です。閉じた状態で、W110×D85×H25mmというコンパクトサイズ(ちょうど、バイシクルのポーカー用トランプ程度の大きさ)ながら、普段ガイド納富の財布の中にギッシリ入っているカード類(15枚程度)や領収書などを全部入れて、それに小銭少々と紙幣を7~8枚が、何の苦もなく収納されてしまいました。しかも、その状態でも、何も入れていない状態と、ほとんど見た感じの大きさが変わらないのです。
元々、各収納部分のマチを大きくとってあるし、全体が箱形になっているので、内容量によって膨れ上がるということが少ない構造になっているのです。なので、ポケットに入れても出し入れがスムーズですし、服も財布の膨らみが目立つこともなく型くずれしません。さらに、表面に使われているイタリア製のタンニンなめし革は、ポケットから出し入れされることで、カバンの中に入れておくより何倍も早く、良い感じにツヤが出て馴染んでいきます。革小物は、ポケットなどの身体に近いところで使うことで、どんどん育っていくものなのです。
紙幣の収納を、専用のスペースを用意するのではなく、ポケットと紙押えだけで行う構造で、財布が必要以上に膨れるのを抑えているのが、構造上の第一のアイディア。スイカなどのICカードも、この紙幣を差し込む部分に入れて利用します。この構造だと、紙幣を数えてから取り出すことが出来て使いやすいのもメリットです。ただし、何十枚という紙幣は入りませんし、紙幣のしわや折り目が多いと入れにくいことがありました。大金を持ち歩くのには向きませんが、普段の利用なら問題ない(というよりむしろ使いやすい)と思います。
マチが広く取られたカードポケットが3つ。
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カード類は、従来の財布のようなカードを差し込むスタイルではなく、三つに分かれたポケットに放り込むようにして収納します。マチが大きいので、中が見通せて、目的のカードをスムーズに出し入れできるのがポイントです。ガイド納富は、一つのポケットにキャッシュカードやクレジットカードを、もう一つのポケットには会員証やポイントカードを入れ、三つ目のポケットはメモや領収書入れとして使っています。このような自分なりのルールで使えるフレキシブルさが、この財布の魅力だと感じました。
見通しと出し入れのしやすさを追求した形
カードポケットをさらに開くとコインケースが立ち上がる。
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カードポケットの下には、箱形に開くコイン入れが用意されています。このスタイルは単独で売られているコインケースには良く見られる形なのですが、これを紙幣やカードも入る財布に内蔵して、しかも、全体の使い勝手やデザインの邪魔にならないように収めているというのが、この「MILLEFOGLIE」の最大の特徴でもあります。
小銭の出し入れに関して、ここまで楽で早くて快適な財布を、ガイド納富は他に知りません。368円なんて支払いも、さっと小銭だけで出来たりするのです。この使い勝手を実現するのが、広く開くことから来る見通しの良さ。カードや紙幣の扱いやすさも、この見通しの良さが実現したものですし、カード、コイン、紙幣を全て見渡せる構造も、財布全体の見通しを良くするために考えられたものです。見通しが良ければ、どこに何があるかが分かりやすく、それが使いやすさに繋がります。いかに見通しの良い財布を作るか、というのが、この財布の出発点だったのではないかと思うのです。
ガイド納富の「こだわりチェック」
アンティーク風の留め具を革に直接差し込んで留める。
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日常の、5万円以下くらいの用途で利用する財布として、ここまで使いやすい財布は初めてでした。紙幣と小銭の出し入れや、カードの収納量に関しては、申し分がない使い勝手の良さです。留め具が二ヶ所付いているのも、押えれば簡単に留まるので面倒ということもありません。
カラーバリエーションも、紹介した黒・オレンジのタイプの他に、焦げ茶・グレー、黒・ベージュ、茶・ベージュといった組み合わせのものがあり、厚みも、紹介した25mmタイプの他、もう少し収納量が増える30mmタイプのものがあります。外側の革と、内側の布の色のコントラストを楽しめるのも、この独自の構造のおかげです。
素材感、特に内側の布の質感は好き嫌いが分かれる所だと思いますし、クルリと周囲を革で巻いただけのデザインも評価が分かれるところとは思います。純粋に財布として見た時には、他にデザインが良い財布も沢山あると思います。しかし、この使い勝手と収納量から考えると信じられないくらいコンパクトに収まる持ち心地は、この「MILLEFOGLIE」だけでしか味わえないもの。使い始めると、ちょっと手放せないです。
<関連リンク>
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