立体的で美しいシルエットを実現する芯地
裏地は最小限の半裏仕立て(仕様)です。裏地はピンク色のキュプラ素材を選びました。袖裏は付いているので袖を通したときの滑りは良いですね。 |
完成したジャケットを羽織ってみて、軽いといった印象の他に「やっぱりヴェスタのジャケットは綺麗なシルエットだな~」と思ってしまいました。
マスターパターンが優れていて、しかも依頼している縫製工場の技術も高いんでしょう。でもそれだけではありません。立体的で美しいシルエットの要が使っている芯地なんですね。
Made to Measureを専門に行うヴェスタの場合、お客さんの一人一人に合わせて芯地を作るわけにはいきません。
とはいえサイズ別、そして2B、3B、ダブルブレストといったデザイン別に対応して、それぞれに適した芯地を用意しています。芯地を一から作るフルオーダーではないにしろ、価格以上にこだわり抜いた芯地なんです。
ヴェスタが使用するベルテロ社の芯地です。下からフェルト、増芯、本バス芯、台芯。 |
そんなヴェスタが選んだ答えが、イタリアのベルテロ社の芯地を使うことでした。とくにベルテロ社の本バス芯(毛芯)は国内の柔軟性のあるテーラーの間では評価が高く、適度なハリがあるのが特徴です。
国産の芯地も使い方次第なんですが、かたくて反発力があり過ぎるため、どうしても適度な柔らかさというか、服地が本来備えている美しいシルエットを消してしまうこともあるわけです。つまり鎧のようなスーツになってしまうんです。
ヴェスタが使うベルテロ社の芯地は、フェルト、増芯、本バス芯、台芯の4つのパーツから構成されています。テーラーによって使う芯地も違うようです。これはヴェスタの場合ということですね。
フェルト・・・芯地のゴワゴワ感が直接肌に触れないように芯地と裏地の間に入っていて、いわば緩衝材のような役目です。
増芯・・・土台となる台芯のドレープを補強する効果があり、中から押し出すような感じです。
本バス芯・・・馬の尾の毛を横糸に入れているため反発力があり、前肩から脇のボリュームを出してくれます。手で触ってみるとたしかに弾力があります。
台芯・・・土台となる芯地で、胸だけでなくラペル(衿)にも入っています。本バス芯ほどの反発力がないのが特徴です。
半裏仕立てなんですが、細腹部分には裏地がないですね。よく耳にする大見返しよりも軽く仕立てることができます。 |
このように表から見えない部分にもけっこうこだわっているわけです。シャツ生地自体が柔らかいので、男性的な美しいシルエットを出す場合はやはり芯地が必要なんですね。
ちなみに肩パットは入っていません。この優れた芯地の力を100%発揮するために、とうぜん縫製にも力を入れています。
裏地は半裏仕立て(仕様)なので猛暑日以外は着れそうです。選んだ裏地はキュプラ100%のピンク色です。ラベンダー色と悩んだのですが、最終的にピンクになりました(笑)。袖裏も付いているので袖を通したときの滑りはいいです。
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