日本の老舗シャツ屋はどうなのか?
都内の老舗シャツ屋さんで作ってもらったシャツ。とても細かな手刺繍だ。文字の高さは4ミリ。私物。 |
では日本の老舗シャツ屋はどうなのか、個人的に信頼できるシャツ屋に電話取材してみた。まず都内では大和屋シャツ店、谷シャツ商会、GINZAナカヤに。あとは金沢の老舗、金港堂にモノグラムの位置についてあれこれ聞いてみた。
結論からいうとやはり左側が基本で、左袖の上腕付近が最も多く、次いでカフス、ポケット、ウエストとポケットの間の順であった。
こちらはショップなのでお客さんが「ここに入れたい」といえば従うのが基本である。そのためお客さんの好みがかなり反映していると思って間違いない。
刺繍の方法については、職人による手刺繍にこだわる老舗も多かった。ただ刺繍できる職人の方は本当に数が少ないそうである。
海外のブランドはどうなのか?
ランバン ブティック銀座店、日本橋三越本店本館シャルベブティック、リスト・ルージュに聞いてみた。
基本的に左側というのは同じだが、ランバンは左上腕とカフス。シャルベは左上腕とウエストとポケットの間、リスト・ルージュはポケットありの場合は中央上部に、ない場合は第4ボタンの高さのところ、剣ボロなど。ちなみにリストルージュの文字の高さは5ミリである。
とくにシャルベではカフスにモノグラムを指定するお客は少ないという。また、刺繍糸の色に関しても生地に近い色を選ぶことが多いそうだ。
これは洗練された顧客に愛されているということでもあるが、パリ本店の意向を色濃く反映しているともいえる。
刺繍の方法については、3店とも手刺繍だった。ミシン刺繍よりも手刺繍のほうが雰囲気が出るということと、ほつれにくいという話を聞いた。やはり手間がかかっているということが大切なのである。
イタリアで縫製を行っているペコラ銀座では、左側が基本で、ウエストベルトから15センチ~20センチ上の位置が多いということだ。こちらもやはり手刺繍だった。
また、原宿のOLDHATに電話したところ、ちょうどターンブル&アッサーとシャルベのシャツがあった。ターンブル&アッサーは胸ポケット付きのものでポケット上部に施されていた。シャルベはポケットなしで、左側のやや下側の位置に刺繍があった。
ジャケットを着ると隠れる位置に
都内の老舗シャツ屋さんで作ってもらったシャツの手刺繍。裏から見たところ。私物。 |
日本の老舗と海外の老舗とではモノグラムを刺繍する位置が少し違うようだ。
結論をいうと日本の老舗はカフスにするお客が多いということだ。カフスといっても施す位置はそれぞれ違うだろうが、カフスに指定するということは、ジャケットを羽織っても見える可能性があるということだ。
つまりモノグラムを見せてもいい、あるいは見せたいという願望が強いのである。
一方、本および海外ブランドでは左上腕、ポケット、ウエストとポケットの間という位置が多く、いずれにしてもジャケットを脱がない限り、モノグラムが見えるということはない。
おそらく彼らはシャツ=下着と考えているため、人前でジャケットを脱ぐことはないのだろう。誰からもモノグラムを見られることがないのである。
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