スーツのディテールでは、これまで雑誌でよく取り上げられてきた本切羽やお台場仕立て、重ねボタンといった仕様はさほど重要ではなく、外からは見えない芯地の方にこだわりたい。
いいスーツは間違いなく毛芯仕立てで、馬の尻尾の一本毛を使った張りのある本バス毛芯や、「スーパー120’s」程度の柔らかな生地に向いているリネンとキャメルヘア(らくだの毛)を混紡した毛芯などがある。いずれにせよ美しい胸元は芯地で決まるといってもいい。
またベントはセンターベントでもサイドベンツでも好みの問題だからそれほど気にしなくてもいいだろう。ちなみにフォーマルウェアはノーベントという約束ごとがある。
ブリティッシュ・スーツにはチェンジポケットがついたり、クラシコ・イタリア系なら舟形のバルカポケットが胸についたりする。自分の好みをわかりやすく主張するディテールのひとつだ。
肩のラインは袖山の高いビルドアップ・ショルダーと、あまり盛り上がらないナチュラル・ショルダーに大別される。一般にフルオーダー(ビスポーク)でしばしば見られる前者の方がエレガントとされているが、その反面かなり主張が強いため、控えめなスーツが好きな人は後者を選ぶ傾向があるようだ。