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ジェームズ・ボンドが愛したシャツ(2ページ目)

2009年1月、最新作『慰めの報酬』が公開される007。今作から衣装がトム・フォードに変わりますが、007といえば「ターンブル&アッサー」といわれるほど、ボンドが愛したシャツを紹介します。

池田 保行

執筆者:池田 保行

メンズファッションガイド



Vゾーンを引き締めるターンブルカットの威力

衿
衿羽根の端、肩線の縫い目辺りが少しくびれているのがわかります。photo:石井幸久
シャツの表情は衿羽根で決まります。羽根の開き加減によって、レギュラー、セミワイド、ワイドなどと呼ばれますが、羽根の長さや台衿とのバランス、ステッチや芯合わせなどさまざまな要素が左右する部分なので、各ブランドとも独自の手法で自慢の衿羽根を仕立てています。

ターンブル&アッサーの衿羽根は、英国では一般的なセミワイドカラーです。芯もほどよくしっかりしており、ステッチは衿縁から5ミリ内側に施されます。

よく見ると衿の形状が首筋から剣先にかけてほんのりS字ラインを描いています。これこそがターンブル&アッサー独特のカット「ターンブルカット」と言い、このシャツ最大の特徴とされています。シャツ単体で見たときに襟元にニュアンスが出るのはもちろん、ジャケットのラペル部分から衿が飛び出すのを防ぎ、つねに引き締まったVゾーンを演出してくれます。

ただし英国紳士にとってシャツを下着と捉えるので、シャツ1枚の姿はパンツ一丁と同じ。ジャケットを脱いでシャツ1枚の姿でいるのは恥ずかしいと考えます。しかしオフィスでシャツ1枚ということも少なくない日本人にとって「ターンブルカット」の衿羽根は、なかなかにおしゃれ度を上げてくれます。



前立てに見る伝統と英国紳士の矜持

前立て
前立てがあるシャツはカジュアル用…ではなく、英国式ドレスシャツではよくある仕様です。 photo:石井幸久

シャツの前立て(プラケット。ボタンを取り付ける左身頃の折り返し部分)にも種類があります。前立ての有り・無し、太さやステッチの有無によって、シーンによって着分けたり、国によっても異なる仕様があります。

一般的に前立ての無いシャツはドレス用。ボタンが見えない比翼仕立て(フライフロント)のものほどドレス度は高いとされます。前立てのあるシャツはカジュアル向けとされ、ネルシャツなどはほとんど前立てがあるはずです。ポケットも同様で、ポケット付きのシャツは労働用のシャツ。ドレスシャツはポケット無しがアタリマエ。

イタリアあたりだとこの仕様が顕著なのですが、英国式では前立てはドレス&カジュアル問わず取り付けられています。ただし最近は、こういったルールは形骸化の傾向もありますが。

ターンブル&アッサーが採用している前立ては、ステッチが前立てを3等分しているのが特徴です。ボタン幅に沿うようにステッチが入り、折り返し部分がヒラヒラと起き上がるようになっているんですね。これぞ英国式表前立ての基本形。ミニマルな前立て無しのドレスシャツとは一線を画す、装飾としてのディテールであり、フリルシャツの名残といえるものです。ターンブルが頑なに守り続けてきた技術と伝統の証拠ですが、こういった仕様を現代まで継承するあたりにシャツメーカーとしての矜持すら感じさせます。

ターンブル&アッサーは日本にオンリーショップがありません。有名セレクトショップで手に入れることができます。本国ではオーダーも受け付けているようです。

80年代はスリーブも身頃もダブダブのシャツが流行りましたが(アームバンドとかしてました。笑)、シャツこそぴったりフィットの細身が最高におしゃれです。最近、あるところでオーダーしたシャツが届きましたので、そのご紹介を次回に…。


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