Vゾーンを引き締めるターンブルカットの威力
衿羽根の端、肩線の縫い目辺りが少しくびれているのがわかります。photo:石井幸久 |
ターンブル&アッサーの衿羽根は、英国では一般的なセミワイドカラーです。芯もほどよくしっかりしており、ステッチは衿縁から5ミリ内側に施されます。
よく見ると衿の形状が首筋から剣先にかけてほんのりS字ラインを描いています。これこそがターンブル&アッサー独特のカット「ターンブルカット」と言い、このシャツ最大の特徴とされています。シャツ単体で見たときに襟元にニュアンスが出るのはもちろん、ジャケットのラペル部分から衿が飛び出すのを防ぎ、つねに引き締まったVゾーンを演出してくれます。
ただし英国紳士にとってシャツを下着と捉えるので、シャツ1枚の姿はパンツ一丁と同じ。ジャケットを脱いでシャツ1枚の姿でいるのは恥ずかしいと考えます。しかしオフィスでシャツ1枚ということも少なくない日本人にとって「ターンブルカット」の衿羽根は、なかなかにおしゃれ度を上げてくれます。
前立てに見る伝統と英国紳士の矜持
前立てがあるシャツはカジュアル用…ではなく、英国式ドレスシャツではよくある仕様です。 photo:石井幸久 |
シャツの前立て(プラケット。ボタンを取り付ける左身頃の折り返し部分)にも種類があります。前立ての有り・無し、太さやステッチの有無によって、シーンによって着分けたり、国によっても異なる仕様があります。
一般的に前立ての無いシャツはドレス用。ボタンが見えない比翼仕立て(フライフロント)のものほどドレス度は高いとされます。前立てのあるシャツはカジュアル向けとされ、ネルシャツなどはほとんど前立てがあるはずです。ポケットも同様で、ポケット付きのシャツは労働用のシャツ。ドレスシャツはポケット無しがアタリマエ。
イタリアあたりだとこの仕様が顕著なのですが、英国式では前立てはドレス&カジュアル問わず取り付けられています。ただし最近は、こういったルールは形骸化の傾向もありますが。
ターンブル&アッサーが採用している前立ては、ステッチが前立てを3等分しているのが特徴です。ボタン幅に沿うようにステッチが入り、折り返し部分がヒラヒラと起き上がるようになっているんですね。これぞ英国式表前立ての基本形。ミニマルな前立て無しのドレスシャツとは一線を画す、装飾としてのディテールであり、フリルシャツの名残といえるものです。ターンブルが頑なに守り続けてきた技術と伝統の証拠ですが、こういった仕様を現代まで継承するあたりにシャツメーカーとしての矜持すら感じさせます。
ターンブル&アッサーは日本にオンリーショップがありません。有名セレクトショップで手に入れることができます。本国ではオーダーも受け付けているようです。
80年代はスリーブも身頃もダブダブのシャツが流行りましたが(アームバンドとかしてました。笑)、シャツこそぴったりフィットの細身が最高におしゃれです。最近、あるところでオーダーしたシャツが届きましたので、そのご紹介を次回に…。
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