アメトラスーツの特徴って?
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ラペルにステッチが打たれているのはブレザーと同じディテール。紳士服の世界ではブレザーは「カジュアル」なジャケットとされているんですね photo:石井幸久 |
クラシコ・イタリアやブリティッシュテイラードと異なる点は「カジュアル仕様」というデザインの観点です。たとえば上の写真を見るとラペルにステッチが浮き上がっていますね。これはいわゆるハンドスーツのハンドステッチではなく、ラペルエッジの内側、7ミリぐらいのところにミシンでガーッとステッチングされています。ドレス仕様のスーツでは、こういったステッチは見えないほうが美しいとされるので、こういうディテールが「カジュアル仕様」であり、アメトラ的であるというわけです。
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たしかにパッチ式ポケットのジャケットは、デニムやチノパンと合わせるなど、ラフな着こなしが似合います photo:石井幸久 |
こちらはポケットです。フラップ付きですがパッチポケットになっています。これもカジュアルなジャケットの定番ディテールですね。ドレススーツの最高峰であるフォーマルスーツはフラップなしの切りポケットが基本です。それに対して後付けのパッチポケットはカジュアルなディテールというわけです。「スポーティな」という表現を使うこともあり、このテのジャケットを「スポーツジャケット」ということもあります。
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フックだからといってなんらかの機能があるわけではないのですが、後ろ姿を見てひとめでアメリカンスタイルであることを印象付けるポイントになります photo:石井幸久 |
センターベントの縫い合わせ部分がカギ型になっているのがわかりますでしょうか? これをフックベントといってアイビースタイルのブレザーによく見られたディテールです。ルーツをたどるとVANの時代にまで遡ります。1950年代アメリカアイビーリーグの学生のブレザーに見られたディテールを、VANの創始者である石津健介氏が取り入れて日本でも流行したものだそうです。団塊世代のお父さんには懐かしいディテールでしょう。
こんなふうにジャケットのディテールデザインを少し変化させて、雰囲気を変えるのがジャケット、ひいてはスーツの印象を大きく左右します。紳士服の面白さは、こういうところにあるのですが、そういえばデニムの赤耳だとか、隠しリベットだとかにこだわるのと同じようなものかもしれませんね。
ウエストに絞りがなく、サイドがストンと落ちる本物のボックス型シルエットはさすがに現代の潮流とはかけ離れていますので、そこまで真似る必要はありません。小さいところで「なんとなく雰囲気違うねー」といわれるレベルにこだわることでスーツスタイルが愉しめるのが大人のお洒落と心得てください。
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