マンガで知るスーツの正統
『王様の仕立て屋 サルトフィニート』大河原遁(集英社刊) |
最近はOVER30のメンズファッション誌も書店やコンビニに多く並び、『LEON』や『MEN’S EX』、『ZINO』、など新興の男性誌ではスーツ特集が多彩です。流行を知りたい、もっと深いところを知りたいという方ならこういった雑誌を定期的に読まれることをオススメしますが、もっと気軽にマンガでスーツについて知るなら『王様の仕立て屋~サルト・フィニート~』をお奨めします。
ビジネススタイルに特化するというよりも「クラシックなスーツとは?」という視点をさらに深めるために最適なストーリーです。
ナポリの泥棒市の片隅に住む、日本人サルト(仕立て職人)・織部悠。彼は“ミケランジェロ”の異名を持つ、伝説のサルト最後の内弟子。卓越した技術力を持ちながら、富や名声に興味はなく、下請け仕事やアルバイトで生計を立てています。彼の元にやってくるのは、落ちぶれた芸術家や、うだつの上がらない中間管理職、他所のサルトで注文を断られた無理難題のクライアントたちです。織部は法外な値段で仕事を引き受けますが、彼らは織部の仕立てたスーツを纏うと、みるみると輝き、生きる力を取り戻すのです。
まるでブラック・ジャックのような仕立て職人の手腕が痛快ですが、ストーリーの端々に、スーツとは、仕立て服とは、何ぞやという男の服飾のテーマが隠されています。
スーツは流行を追うだけでなく、正統を知り自分のスタイルとして着こなすことで、初めて男の武器となります。そのための基本と正統を知るために、マンガを使うのは現代的で合理的です。監修には服職評論家・片瀬平太氏があたっていらっしゃいますので、内容もお墨付き。僕も全巻取り揃えています。
次のページではもっと詳しく知りたい方におすすめする本を紹介します。