商品力は高い、必要なのは新たなブランドイメージの構築
3.0には新開発の直噴3リッターV6エンジンを搭載。最高出力273ps/最大トルク302Nmを発生する。6ATが組み合わせられ、10・15モード燃費は8.4km/l |
結論からいうと、まったくもってCTSだった。ワゴンに乗っているという感覚はない。バックで駐車する際に、広い室内を認識するが、それとてステーションワゴン的な広大さではない。欧州Dセグメントの、たとえばBMW3シリーズツーリングあたりと同じように、引き締まった印象がある。
それは、強靭なボディによって生み出される、いわばプラスの錯覚なのかも知れない。空間は確実に広がっているし、サルーンよりもリアの体積は圧倒的に大きい。それでも乗り味に、街中で流している限りは変化が出ないということは、やっぱりボディがちゃんと(一般的にイメージされるアメリカ車とは違って)強く、クルマ全体に一体感があるということだ。
セダンもそうだったが、CTSのこのグローバル化した商品力の高さが、逆に日本においては無理解を生んでいるようにも思う。それは、“ヨーロッパ車みたいに走るアメリカ車なんていらんわ! だったらベンツかビーエムに乗るやん”という意見に代表されるもので、確かにそれには一理ある。古き良き時代の名残が澱となったような日本におけるキャデラックブランドのイメージが、CTSをまともに理解しようとする“最初の好奇心”を阻んでいるのかも知れないな、と。キャデラック、という名前の響きとラグジュアリィ性を語ろうとすればするほど、その澱に絡めとられてしまう。プレミアムブランドの難しさがそこにある。
見栄えも性能も見違えるほどよくなった。モノはいい。アメリカンモダンラグジュアリィのファッションを、ヨーロッパ大陸でも十二分通じるパフォーマンスで着(乗り)こなす、という知的な遊びを出来る人にまずは奨めたいが、そうそういないだろう。ということは、やはり、日本におけるキャデラックブランドのイメージチェンジが必要か。
もっと若くてスポーティでかつラグジュアリィな、たとえばちょっと値は張るがユニークなデザイナーアクセサリー的イメージへ。クルマへの価値観が大きく変わりつつ今、ニッチな高級ブランドとしては、潔く決断してもいいタイミングだと思う。
レザーシートを標準装備。廉価版のスタンダード以外にはHDDナビとBOSE製10スピーカー5.1chキャビンサラウンドシステムを装着している |
通常720リッターの容量のラゲージは分割可倒式リアシートを倒すことで最大1523リッターまで拡大可能(本国数値)。テールゲートには高さ調整メモリー機能が付き、ゲートが開く高さを調節することが出来る |