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R8V10で叶えるオトナのスーパーカーライフ(2ページ目)

V10エンジンを搭載したR8で東奔西走した、贅沢な一週間。V10モデルは、サーキットの実力と日常の使いやすさという2面性をもつ、本当のデイリースーパーカー&スポーツカーでした。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

他にはない冷静と情熱の切換えスイッチ

アウディR8 5.2FSIクワトロ
フロントエアインテークの内側や、LEDを使ったテールランプはブラックに変更。エアインテークを大型化するためサイドブレードが大きくなっている。アルミホイールも専用の10スポークYデザイン

R8の、本当の実力はサーキットでしか試せない。逆にいえば、(プロでなくても)これほどサーキットで楽しめる、ミッドシップスポーツカーは他にない。過去の経験でいえば、NSXやF355も相当に楽しかったが、速度域が一段低い。V10というハイパワーユニットをそれなりに振り回せる快感は、他のスーパーカーでは到底味わえない(例外が一台。兄弟車というべきガヤルドLP550-2はかなり楽しかった)。

はっきり言って、街を流している限り、面白くも何ともない。確かに、アウディに乗っている気分だ。V10モデルはV8に比べて迫力のある排気音を響かせてくれるとはいえ、それでもフェラーリやランボルギーニを転がしたときのようなわくわくドキドキはほとんど感じない。けれども、サーキットを一度でも走ってリアルスポーツカーとしての実力を十分に知った上で日常使いをすれば、落ち着いて運転できることの二面性に、他のスーパーカーにはない価値を見いだすことができる。冷静と情熱の切換えスイッチは、ドライバーにまったく委ねられているのだった。イタリアンスーパーカーは、常に情熱スイッチフルボリュームである。

もっとも心地いい気分に浸れるのは、高速道路を制限速度前後でクルージングしているときだった。6速固定でも、スムースに気分よく加速するし、その際のシャシーの弾み方というか反応の柔らかさがこの上なく気持ちいい。まるですべてのパーツがラバーで包まれているかのようだ。

アウディR8 5.2FSIクワトロ
通常より約50%軽量なセラミックブレーキ、サスペンションのダンピング特性を連続的に変化させ挙動を抑制するマグネティックライドなどがオプションで用意される

乗っててワクワクさせてくれなきゃスーパーカーじゃない。ボクもずっとそう思ってきた。けれども、新しいスーパーカーになればなるほど、高性能になるばかりで昔のようなスリルやハラハラやドキドキは薄れてきている。ならばいっそ、そういう気分を味わうために古い年代のスーパーカーを一台手に入れて、普段は自分で制御(気分も性能も)可能なR8に乗る、という選択肢の方が随分と魅力的なスーパーカーライフじゃないだろうか。

オトナのスーパーカーライフ、というものが言葉的に成立するのかどうか怪しい(スーパーカーという単語自体、子供心の延長線上にあるから)。けれども、R8はそういう世界観をもつクルマだと思う。

アウディR8 5.2FSIクワトロ
メーター内にV10の文字が入る専用メーターや、ナッパレザーを用いたスポーツシートが備わる
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