とにかく、ベラボーに乗りやすい
'09年4月に追加された5.2リッターV10エンジンを搭載したトップモデル、R8 5.2FSIクワトロ。クワトロ(4WD)やシーケンシャルトランスミッションのRトロニックを備え、0-100km/h加速3.9秒、最高速度316km/hを誇る。サイズは全長4445×全幅1930×全高1250mm。価格は1994万円 |
R8の、それもV10搭載車と一週間を過ごす。人も羨む機会を得て、ボクはR8とともに文字通り東奔西走した。長距離を走る出張取材だけでなく、スーパーカーのミーティングにも顔を出した。週末にはクルマ好きの友人を訪ね、一緒にドライブを楽しんでもみた。袖ヶ浦のサーキットも走った。もちろん、毎日のアシとしても、かなり贅沢だけど、使ってみた。快晴の日もあれば、雨の日もあり、ちょっと天候が不安な日もあった。
あっという間の一週間。乗り終えての結論は、ただひとつ。これぞ本当のデイリースーパーカー&スポーツカーだ、ということ。
とにかく、ベラボーに乗りやすい。ゆっくり走っていると乗り心地もよく、気持ちの持ちよう的なことも含めて全てがアウディっぽいから乗りやすい、ということもあるけれど、それにも増して、クルマのバランスというか、乗り手との一体感が素晴らしい。前輪は腕と、後輪は腰と、それぞれ常にきっちり繋がっているように感じられるから、たとえば商店街のような込み入った場所でも、ためらいなく入っていける。幅さえ気にならない。ランボルギーニやフェラーリだと躊躇してしまうような場所でも、難なく入っていける。この機動力は頼もしいかぎり。
4WDゆえのフロントデフ鳴りや、ロボタイズドミッションゆえの波打つオートマ変速フィールなど、日常遣いにおいて多少の不満もあるけれど、そんなことは“スーパーカースタイル”のもとではゴミのような不満だ。荷物置き場の不安も、積極的にボンネットを開けてトランクを使えば、すっかり解消される。少なくとも、男一人分の荷物くらいはどうってことない。ボンネットを開けたり閉めたりが億劫なのは、閉めるときに余分な力が入って凹ませたり歪ませたりしたら嫌だなあという気持ちが心の奥底にあったりするからなのだが、R8は軽く一押しで締まるように工夫されているのも、トランク積極利用派には嬉しい。
注目度も抜群である。多くの人が“なんだ、これは?おやアウディなのか?”という目で覗き込んでくる。アウディだ、ということは何となく分かるようで、目線に遠慮がない。ランボルギーニに乗っていると、他人と視線が合うことなど滅多にないが、R8はけっこう合う。でもって、高速のSAなどでは話しかけられたりもする。ちょっと知っている人なら、“はじめてみた”“ブレーキでかい”“V10だ?”という反応が多く、逆に初めて知る人はアウディのスーパーカーであると知ってかなり驚かれる。お値段2千万円にも驚愕される。
ミッドシップに搭載される最高出力525ps/最大トルク530Nmを発生する5.2リッター直噴V10エンジン。ドライサンプシステムの採用で低い位置にレイアウトされる |
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